内戦下のシリアで過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦を続けてきた米軍の撤退を、トランプ米大統領が表明したことを受けて、IS掃討で米軍と共闘する欧州主要国の閣僚は20日、「ISは依然として脅威」として作戦続行を相次いで訴えた。米軍撤退による「力の空白」に乗じ、ISが勢力を盛り返すおそれがあると警告した。
米軍、シリア撤退始める トランプ氏「ISに勝利した」
英国のウィリアムソン国防相は20日、「(対IS戦の)勝利を確実にするには、まだ困難な仕事が多くある」と強調。フランスのパルリ国防相も20日、「ISは地図から消えていない。決定的に軍事制圧しなければならない」とツイッターに投稿した。英仏は米軍が主導する有志連合のメンバーで、シリアでIS拠点を空爆してきた。両国防相は今後もIS掃討を続ける意向を示した。
また、ドイツのマース外相も20日、「ISの脅威はなくなっていない。(米軍撤退の)決断はこれまでの成果を台無しにするおそれがある」と述べた上で、「テロリストはシリア東部で活発だ」と指摘した。
トランプ氏は「ISは敗北した」として米軍撤退を決断したが、直近の米政府報告書では、ISはシリアの領土の約5%を支配し、約1万4千人の戦闘員が同国にいるとしている。(ウィーン=吉武祐、パリ=疋田多揚)