暗闇に包まれた秩父宮ラグビー場の一角。全国大学選手権準決勝で天理大に完敗し、連覇が9で途絶えた帝京大の岩出監督は、100人を超える選手やスタッフが作る円陣の中心で「この悔しさはもちろん、これまで味わった喜びも忘れないでほしい」と語りかけた。珍しく、その声が震えていた。
帝京大ラグビー部を大学スポーツを代表する存在に育てたのが、岩出監督だ。2009年度に初優勝した当初は強力FWを前面に押し出した戦いぶりが批判の的にもなった。岩出監督はそうした声を糧にスタイルを進化させた。近年は球がよく動き、個々の判断と組織力とがかみ合ったラグビーで、大学の競技レベルを引きあげた。
帝京大10連覇消える 全国大学ラグビー、天理に敗れる
9連覇の道中では日本選手権で社会人のNECを破るなど、記憶に残る勝利を収めた。医療面や栄養面に配慮した体作りのために、他校に先駆けて環境を整備。SH流、SO松田ら日本代表の主力になる多くの素材を磨き上げた。気付けば、「将来ラグビーで食べていきたい」という高校生たちが憧れるチームの一つになった。
勝ち続けるにつれ、岩出監督は…