今月7日、大阪桐蔭(大阪第1)の初優勝で幕を閉じた第98回全国高校ラグビー大会。初出場の聖光学院(福島)が花園にたどり着くまでには、2011年に起きた東日本大震災の復興支援がもたらした縁があった。
ラグビーワールドカップ2019
それをつなげたのが、現在2年で今大会にも出場した渡辺和輝だ。小学4年でタグラグビーを始めた渡辺和は、震災後、福島県伊達市の同校グラウンドで開かれたタグラグビー教室に参加した。そこで渡辺和を含む子どもたちと交流したのが、社会人のトップチャレンジリーグに所属する三菱重工相模原ダイナボアーズ(神奈川)の選手たちだった。渡辺和はチーム幹部にパンチを見舞うわんぱく少年として印象を残した。
高校でも「あの子が続けているのか」と感動した三菱重工相模原のチーム幹部が、同校へコーチを派遣することを決めた。昨年5月から月1度、元日本代表の安藤栄次コーチらが同校を訪れるようになった。
聖光学院の武器である「展開ラグビー」は、コーチの指導によるところが大きい。上位リーグならではのパス技術や動き方を教わったことで、「飛躍的に伸びた」と佐藤忠洋監督。大会直前にも相模原市のグラウンドに足を運び、調整をした。
安藤コーチも見守る中で迎えた1回戦の城東(徳島)戦は、持ち味を相手守備に封じられ7―24で敗れた。渡辺和は後半途中から出場したが、見せ場はほとんどなかった。
試合後、全国初トライを奪ったナンバー8藤田優希弥主将(3年)は「コーチがいなかったら、夢の舞台に立ててなかった。感謝したい」と話した。佐藤監督も「これからも展開ラグビーを貫く。相手がいないところに運ぶだとか、もっと進化したい」と次を見据えていた。
今月4日、渡辺和ら2年生を中心とした新チームが始動した。安藤コーチらの指導はいったん終了したが、3月には三菱重工相模原の選手が指導に来るという。次の99回大会で、どんな成長した姿が見られるか楽しみだ。(大坂尚子)