2020年東京五輪の新競技に採用されたスポーツクライミング。この競技の花形種目「ボルダリング」の日本一を決めるジャパンカップが26、27の両日、東京都世田谷区の駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場で行われる。日本は世界屈指のボルダリング王国。激しい優勝争いが展開されそうだ。(吉永岳央)
クライミング野中、池袋にスピード壁設置 自ら資金集め
初出場の世界選手権で優勝
ワールドカップ(W杯)未勝利の19歳が昨年9月、オーストリアで開催された世界選手権で番狂わせを起こした。原田海(かい、日新火災)。初挑戦の大舞台ながら、決勝はただ一人4課題を全完登し、海外の強豪をねじ伏せた。「優勝なんて、思ってもいなかった」
大阪・岸和田市の出身。初めてクライミング壁に触れたのは小学5年の時だった。「たまたま家の近くにジムがあって、母が『やってみる?』って」。老舗ジムの設備は古く、ホールド(突起)の表面はどれもすり減っていた。ただ、これが思わぬ効果を生み出すことになる。原田の売りは、ホールドを一度つかんだら離さない「保持力」。苦笑まじりに、「壁中がつるつるのホールドばっかりで、10年くらい登っていたら勝手に保持力が身についた」。
飛躍のきっかけをつかんだのは、昨年8月にロシアであった世界ユース選手権だった。1位で臨んだ最終課題を完登できず、金メダル目前で逆転を許した。3位。「気合を入れすぎて空回りした。いつも、大事なところで練習以上の力を出そうと思ってしまって……」
以降、心に決めている。「絶対に勝つ、ではなく、いつも通り」。その結果が、世界選手権での勝利。定評のあった技術の高さに心の安定が加わり、一気に殻を破った。
この冬、以前は週4日だった練習を、5~6日に増やしたという。「シーズンを戦い抜く体力の必要性を痛感したから」。苦手な課題にも積極的に取り組んでいる。
「昨日まで登れなかった課題が、ある日できるようになる。その瞬間が一番うれしい」。10歳の時、岸和田のジムで感じた原点が今も成長を支えている。
「世界で一番強いクライマーになりたい」と語り、2020年東京五輪は決して目標にはしていない。「自分の理想像を追い求めて、ひたすらトレーニングをしている感じ。この大会に懸けるっていう思いはあんまりない」。ジャパンカップを前にしても、自然体だ。
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