柔道の第34回全日本女子選手権大会は今夏の世界選手権(東京)女子78キロ超級代表の最終選考会を兼ねて21日、横浜文化体育館で開催され、昨年初出場で優勝した素根輝(そねあきら)(環太平洋大)が2連覇を達成した。一昨年の覇者で昨年の世界選手権を制した朝比奈沙羅(パーク24)を決勝で下した。体重無差別で競うこの大会に予選を勝ち抜いて初出場した女子52キロ級元世界女王の中村美里(三井住友海上)は、初戦で昨年の世界ジュニアを制した体重110キロの児玉ひかる(東海大)に敗れた。
ライバルに5連勝
世界女王・朝比奈との勝負に備え、素根は胸に三つの誓いを忍ばせて練習を重ねてきた。組手で妥協しないこと、絶対に気持ちで負けないこと、そして、最後まで攻め続けること。
引き手を取らせてもらえない展開。先に二つ目の指導をもらってしまった。だけど落ち着いていた。「誰よりも練習を積んで、誰よりも勝ちたいと思っているのは自分」。左の釣り手は相手のアゴの下に。徹底して突き上げ、勝機を探る。
延長に入って形勢逆転。「相手がばてているのがわかった」と素根。攻めた。ここぞで背負い投げ、大内刈りと小気味よく技を繰り出す。9分過ぎ、最後は大内刈りで腹ばいにさせ、反則勝ちを呼び込んだ。
東京五輪へ激しい代表争いを繰り広げている朝比奈に、これで素根は5連勝だ。昨年の世界選手権。団体戦要員で会場にいた素根は、客席から朝比奈が世界女王に輝いた瞬間を見ていた。「すごく悔しかった」。直接対決で勝っていても、外国選手に対する実績が評価される。だから、今年の世界選手権は「何が何でも」出たかった。壁となる朝比奈を想定し、右組みの男子高校生を相手に稽古を重ね、三つの誓いを立てた。
昨年は優勝でも手にできなかった世界切符。2連覇で文句なくつかみ取った。「誰よりも努力をしていきたい」と満足はない。17歳の勢いで日本一になった1年前とは違う。さらに強くなって世界に出ていく。(波戸健一)
朝比奈、悔し涙
6日の全日本選抜体重別に続いて素根に敗れた朝比奈は「初戦からダメダメ。2週間きつい練習をしてきたのに、それを出せなかった」と悔し涙を流した。攻め手を封じられ、最後は3度目の指導をもらって反則負け。「素根選手の方が若いし、小さいので応援もされる。私は悪者でもいいので、最後はうれし涙を流せるように頑張りたい」
中村美里「一生現役で」
体重無差別で戦う全日本は「出るのが目標だった」という中村だが、「やっぱり悔しい。負けず嫌いなんで」と初戦敗退を悔しがった。52キロ級の2009、11、15年世界女王。「体重が倍(110キロ)の相手は想定していたけど、大きかった」と苦笑いした。今月28日に30歳になる。「世間では引退と言われるかもしれないけど、一生現役でいたい。今後も柔道から色んなことを学んでいきたい」