長野県の山中で「余生」を送っていた東京大・木曽観測所(長野県木曽町)の105センチシュミット望遠鏡が今秋、世界初の「動画望遠鏡」として再デビューする。23日、最新のカメラ装置が設置された。流れ星や超新星など、刻々と変化する天文現象を捉える計画で、重力波が観測できた際には、発生源のブラックホールの位置を確認できるのではないかと期待されている。
年老いた望遠鏡、未知の宇宙に挑む 最新の動画技術で
木曽観測所の望遠鏡は、日本光学工業(現ニコン)が1974年に完成させた。夜空の広い範囲を撮影できるシュミット式の望遠鏡として世界第4位だったが、デジタル化への対応が難しく、近年は学生の教育に使われる程度だった。
転機は6年前。キヤノンが試作した超高感度センサーを使って撮影すると、無数の流れ星や小惑星、人工衛星などが夜空を飛び交う様子を鮮明にとらえることができた。
そこで、東大の酒向重行助教らは動画を本格的な天体観測に応用するため、市販のデジカメに使われているセンサーを84枚並べた動画カメラ「トモエゴゼン」を設計。23日、全てのセンサー取り付けが完了した。今後、約半年かけてテストし、今秋から本格観測を始める。
酒向さんは「一時は研究者の足も遠ざかっていた望遠鏡が、トモエゴゼン計画で活気づいた。引退前に大きな発見をさせたい」と語る。(東山正宜)