大学生と元プロ選手らが手を携えて子どもたちを導く――。そんなプロ・アマ合同の野球教室が30日、東京都内で催され、約70人が参加した。評判は上々で、年内に全国規模で開催される計画も明かされた。
合同の野球教室は昨年7月、東大野球部が「東大球場スポーツデー」と銘打って続けている催しに、日本野球機構(NPB)が協力する形で初めて開かれ、今回が2回目。ヤクルト、巨人の2球団の元選手ら7人に東大、明大の選手30人、今年はさらにW杯6連覇中の女子日本代表4人も加わり、5~9歳の子どもたち男女計67人を指導した。
開講に先立ち、元ヤクルト投手の河端龍さん(42)らが学生たちに教える側の心得を伝授。2008年の引退後に球団職員となり、近年は12歳以下日本代表のコーチを務めるなど競技振興を主に担う河端さんは「大切なのは、教える側も楽しむ姿を見せること」と説いた。
教室では、河端さんらと学生らが一緒になって、ボールを捕る、打つ、投げる、といった基本を手ほどき。弟の慶多君(5)と一緒に初めて参加した東京都内の小学1年生、高橋朋希君(7)は「バッティングが楽しかった。腕をこうしてくるっと回って」と、教わったばかりのフォームを実演しながらうれしそう。
横浜市の小学2年生、町田莉心(りこ)さん(7)は弟の悠琉(はる)君(6)と一緒に参加。「女子のプロ選手にも教わることができて、女の子も楽しそう。今は公園でも野球をやっちゃだめなところが多くて、催しは本当にありがたいです」と母親の真委さん(35)は話した。
主催した東大野球部の浜田一志監督(54)は、同様の催しを年内の同時期に北海道から九州まで20カ所以上で開こうと、指導者仲間と連絡をとり合うなどして準備を進めている。「11月29日を『いい(11)普及(29)の日』と決めて、そのころにほぼ一斉に開催できたら。指導のノウハウを持つプロと、場所を提供でき、マンパワーを持つ大学側が力を合わせることの意味は大きい」と浜田監督。
これに対し、NPB野球振興室の平田稔室長(56)も「可能な限り協力したい。野球界全体で底辺拡大を目指していきたい」と前向きだ。催しは、教える元プロ選手らにも喜びをもたらすという。「授業のはじめの『よろしくお願いします』という声と、最後の『ありがとうございました』という声。教室の前と後で、子どもたちの声の大きさも質も変わる。それがわかるときが一番、うれしいですね」。河端さんはそう実感を込めた。(杉山圭子)