「壁」を壊せ――。ドイツのメルケル首相が5月30日、米国のハーバード大の卒業式で講演し、喝采を浴びた。保護主義や孤立主義、ナショナリズムを拒むよう主張。名指しこそしなかったが、かつて自分の前に立ちはだかった「壁」に触れつつ、トランプ大統領の政策を批判した。
メルケル氏は旧東ドイツ出身。講演では、東西冷戦の象徴で30年前に崩壊したベルリンの壁が「私の機会を奪った」と述べた。「不変に見えることも、本当は変わりうる」「無知や偏狭の壁を壊そう」などと力強く訴え、メキシコ国境に壁を築こうとするトランプ氏に釘を刺した。
また、米中の貿易紛争が激化していることを念頭に、「保護主義や貿易紛争は、自由な国際貿易や私たちの繁栄の基盤をも危うくするものだ」と指摘。学生に「自国第一主義的ではなく、多国間主義的であるべきだ」と訴えるなど、暗にトランプ氏を戒めるような発言をするたびに、会場から大きな拍手が送られた。(ニューヨーク=藤原学思)