自民党は、7月に予定される参院選に、旧民主党の国会議員として民主党政権を支えた4人を公認して擁立する。「昨日の敵」から「今日の友」となった旧民主出身者は、どんな思いで選挙を迎えようとしているのか。巨大与党へのくら替えに冷ややかな目もある。
「主張変わってない」
「原子力政策を含めて民主党時代に訴えたことと変わっていない。(参院選では)信任を得られるかどうかだ」。岩手選挙区(改選数1)に4選をめざして立候補する平野達男氏(65)は取材にそう答えた。
平野氏は東日本大震災後に菅内閣の防災相、野田内閣で初代復興相を務めた。野党転落後の2013年に旧民主党に離党届を出し、除籍された。直後の参院選には岩手選挙区に無所属で立候補し、自民候補を破り3選。谷垣禎一幹事長(当時)から入党を求められ、16年7月に自民入りした。
岩手は、国民民主党の小沢一郎・総合選挙対策本部長相談役の地盤。平野氏も元は小沢氏と近かった。平野氏を取り込んだ自民には、「小沢王国」を切り崩そうとの狙いがあった。平野氏も「(自民入り後の)3年間、今までと違った支持者と交流を深めてきた」と自信をのぞかせる。
比例区にも、元民主の3人を擁立する。落選するなどして浪人中で、初めて自民から国政選に出る。
「業界代表で頑張りたい」
元職の尾立源幸(もとゆき)氏(55)は民主党政権で財務政務官を務めた。3選をめざした16年参院選では大阪選挙区(改選数4)に民主党の後身の民進党から立候補し、34万7千票を得たが6位で落選。党を離れ、自民の二階俊博幹事長から「やってみないか」と声をかけられて昨年自民入りした。
大日本猟友会の政治団体「大日本猟友政治連盟」の組織内候補として立つ。支援団体にはパチンコ業者などでつくる全日本遊技産業政治連盟なども名を連ねる。5月17日にこうした支援団体を集めて東京都内で会合を開き、二階氏も駆けつけ激励した。尾立氏は「戻る党がなくなった。野党では建設的な議論がなかなかできない。業界代表として頑張りたい」と話す。
民主党政権で厚生労働政務官を務めた糸川正晃・元衆院議員(44)、熊田篤嗣・元衆院議員(48)も比例区で公認を得ている。
自民が旧民主の議員らを擁立する背景には、かつての民主支持層・団体を取り込み、比例票底上げをめざす狙いもある。自民関係者は「幅広く人材を確保すれば、自民の支持基盤が広がる」と話す。
相次ぐ脱・野党の動きに、民主党政権で閣僚を務めた野党議員の一人は「(4人は)かつての同志だが、もう構ってはいられない」と突き放す。(二階堂勇)