今年は小康社会（ややゆとりのある社会）の全面的な完成に最後の勝負をつけ、貧困脱却の難関攻略に決戦を挑む年だ。習近平総書記は「全面的な貧困脱却と農村部振興との効果的連携を推進し続ける。貧困脱却の認定はゴールではなく、新たな生活、新たな奮闘のスタートだ」と強調した。この重要な指示を貫徹実行するには、中国社会の主要矛盾の変化に焦点を合わせ、取り組みの思考をまとめ、貧困削減の戦略と取り組みのシステムの穏やかなモデル転換を推進し、農村部振興戦略を統合的に組み込む必要がある。（文：朱永新・全国政協常務委員、中国民主促進会中央副主席。人民日報掲載）

今年貧困脱却の難関攻略任務を達成すると、中国は約1億人の貧困脱却を実現して、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における貧困削減目標を10年前倒しで達成することになる。これほど短期間でこれほど多くの人々の貧困脱却を実現できた国は世界に他にない。貧困脱却の成果を揺るぎないものにし、拡大したうえで、貧困脱却と農村部振興との効果的連携を推進するには、貧困脱却の難関攻略における経験と手法を全面的かつ踏み込んで総括し、農村発展の現状を研究・分析し、農村部振興を的確に計画・推進することが不可欠だ。まず、目標を連携させる。農村部振興は長期的プロセスであり、各地の発展も不均衡だ。貧困から脱却したばかりの農村地域は依然として農村部振興・発展の初歩的段階にある。こうした地域の農村部振興の段階的目標は貧困脱却の難関攻略の成果と直接的に連携させて、合理的な期待へと導くべきであり、過大な目標を追求するべきではない。また、貧困脱却の難関攻略の取り組みは産業発展、社会管理などの面で多くの信頼できるデータを蓄積している。農村部振興の各方面の取り組みのために、しっかりとデータと連携させ、こうしたリソースを整理・活用する必要がある。

次に政策・産業面の連携。各地の具体的手法は、国及び地方の都市・農村部社会支援制度との調和を図り、整った社会支援システムを徐々に構築することができる。これは疾病や災害による再貧困化の問題を解決し、貧困脱却の成果を揺るぎないものにするうえでプラスだ。産業による貧困者支援は貧困脱却の難関攻略戦の勝利における重要な経験であり、農村部の発展を促進する持続的原動力でもある。農村部振興を実現するには、引き続き農村部の産業を発展させ、貧困脱却の難関を攻略するための産業プロジェクトを真剣に研究し、農村部振興の目標・計画と結びつけ、整備できるものは整備し、拡大して良いものは拡大するべきだ。これと同時に、現実的条件に基づき高度化と再生を進め、引き続き大衆の自主性・積極性・創造性を引き出して、農村部の人々が産業の発展がもたらす利益を享受できるようにするべきだ。

作業レベルでは、担当機関をしっかりと連携させる。貧困脱却の難関攻略と農村部振興との連携を推進するにおいて、各レベルの貧困者支援の担当機関が簡単に取り消し、変更することがあってはならない。新たな発展構造の構築という観点からは、農村部振興は農村・農業政策に関係するだけでなく、国内の大循環の形成と望ましい運用により直接的に関わってくる。第3次産業の融合、産業高度化の巨大な空間は農村にあり、巨大な市場の後背地は農村にあるからだ。農村、農業、農民は国内の大循環の基礎であり、強力な関係機関による指揮と調整が必要だ。

また作業チームをしっかりと連携させる必要もある。長年にわたる貧困脱却の難関攻略の活動によって、農村を気遣い、農村に奉仕し、農村の幹部・大衆と厚い友情を結ぶ多数の機関幹部が現れ、鍛えられ、試されてきた。これは貴重なリソースであり、しっかりと維持し、活用するべきだ。こうした幹部の育成を重視し、優秀な者を選んで重用し、安定した保障制度及びインセンティブ・メカニズムを構築して、彼らが引き続き農村部振興において重要な役割を果たすようにする必要がある。

貧困脱却の難関攻略においても農村部振興においても、農民が主体的役割を発揮する必要がある。農村部振興は農村・農民全体に目を向け、農村の産業構造を高度化し、農村の居住環境を改善し、農村の基層ガバナンスを強化し、農村の姿を変える必要がある。これには外部資源の投入に頼るだけでなく、それ以上に新たな歴史的条件下で農民を組織する道を探り、農民の主体的役割の発揮を重視する必要がある。したがって最も重要な連携とは、農村部大衆の自発性・積極性・創造性を引き出し続けて、農村部振興に絶えることのない内生的原動力を与えることだ。（編集NA）

「人民網日本語版」2020年11月6日