KING KAZUがまた新たな歴史をつくった。オーストラリア(A)リーグ、シドニーFCのFW三浦知良(38)が移籍初ゴールを含む2得点と爆発した。首位攻防となった27日アデレード戦の前半33分にFWドワイト・ヨーク(34)のパスを、続く後半31分にも左足で技ありの2得点目を決めた。複数ゴールは京都時代の00年11月V川崎戦(3得点)以来。試合は2-3で敗れたが、フル出場を果たし1人気を吐いた。12月の世界クラブ選手権に向け最高のデモンストレーションとなった。
2人のゴールへのイメージはぴたり一致していた。前半33分。カズの記念すべき移籍初ゴールが生まれる。99年、マンチェスターUを3冠に導いたFWヨークのスルーパスが起点だった。測ったようにオフサイドすれすれのタイミングでDF裏に抜けるカズ。その時点で勝負はついた。デビューから通算124分目、左足を振り抜きゴールネットを揺らした。
Aリーグ史上最年長ゴールが決まった、その43分後。カズのゴールショーには続きがあった。今度はゴール左、角度のない難しい場所。抜群のキープ力でGKをかわし、2点目を決めた。駆け寄るFWヨークに抱きかかえられ、さわやかに笑ったキング。それでも試合後は「得点は決めたけど、負けちゃったんで残念ですね」。あくまで勝負にこだわる姿勢がカズらしかった。
それにしても11月の強さは驚異的だ。京都時代の00年以降、これで先発17試合で15発。全得点の4割近い。専属の竹内マッサーによれば「体の動く夏場に走り込むので例年11月に調子が上がる傾向にある」という。シドニー入り後、宿泊する高級ホテルの朝食が、脂分が多いと見ると近所のカフェに出かけ約520円の朝食に切り替えた。パンにはバターも塗らない。好調なバイオリズムの裏には徹底した肉体管理も隠されていた。
海外で決めた初ゴール。カズは誰より重みを感じたはずだ。01年オフ、イタリアを旅行した時のこと。ある空港の荷物受け取り所でカズは目を丸くした。カバンに「サンプドリア戦のゴール。ありがとう」と書かれた紙が張ってあったのだ。見知らぬ空港職員の仕業らしい。ジェノア時代の94年12月に決めた7年も前のカズのセリエA初ゴールを覚えていたのだ。首位攻防で決めたこの日のゴールもシドニーで受け継がれるに違いない。
「Aリーグの首位で日本に帰りたいね」。試合には敗れ、カズの願いは残念ながら崩れ去った。だが自身が在籍した神戸、東京VのJ2降格を吹き飛ばすような2得点で、強烈なデモンストレーションを見せた。来月3日にメルボルン戦を戦い、7日に帰国する。
「成田には白のスーツ姿でいい?報道陣はたくさん来るかな。楽しみだね」。凱旋する12月の世界クラブ選手権が楽しみになってきた。
スポーツニッポン 2005年11月28日