1962年に当時のジョン・F・ケネディ米大統領にひな人形を贈った女性が10日までに、北海道北見市で見つかった。贈り主は松本艶子さん(92)。ケネディ氏の長女、キャロライン・ケネディ駐日米大使が「お礼が言いたい」と捜していたことを知り、松本さんは「頭が真っ白。ただただうれしい」と喜んだ。
1962年に松本艶子さんが、当時のジョン・F・ケネディ米大統領に贈ったひな人形(在日米大使館提供)
ひな人形を巡っては今年1月、在札幌米総領事館が50年以上前の差出人の住所や名前を手がかりに捜したが、見つからなかった。ケネディ大使が今月4日、札幌市を訪問した際、贈り主を捜してほしいと報道陣に呼び掛けたのがきっかけで、松本さんと判明した。
在日米大使館は「今後、松本さんと連絡を取りたい」としている。
松本さんはひな人形を贈った当時、北見市で食料品や雑貨を売る店を営んでいた。詳しい経緯は覚えていないが、ケネディ大統領に手紙を送ったところ、秘書から礼状が届いた。「まさか返事が来るとは思わなかった」と松本さん。英文で読めなかったため、通っていた病院の医師に翻訳してもらったという。
礼状に感激した松本さんは編み物などの内職で稼いだお金で、ひな人形を北見市内の百貨店で購入。店員の助けを借りて直接、ホワイトハウスに送ったという。「高価でなかなか手に入るものではなかったから、びっくりするかなと思って」と当時を振り返る。
松本さんが贈ったのは三人官女や五人ばやしなど15体がそろった本格的な一式。ケネディ大使が子供の頃、このひな人形で遊んでいたことや、今年も3月3日の桃の節句に向け、東京の大使公邸に飾られていることを聞くと「ありがたい」と声を震わせた。
松本さんは現在、北見市内の老人ホームで暮らしている。米国側から受け取った複数の手紙や、同封されていたケネディ大統領の顔が刻まれたコインを今も大切に保管している。
松本さんはケネディ大使に「ぜひお会いしたい」と言うが、何を伝えたいかと記者が尋ねると「それは内緒」とはにかむように笑った。〔共同〕