ドラッグストア大手のツルハホールディングス(HD)の子会社、くすりの福太郎(千葉県鎌ケ谷市)は10日記者会見し、関東で運営する調剤薬局で、薬剤師が薬剤服用歴を記載せぬまま患者に薬を出していたケースが約17万件あったと発表した。同社は「システムに薬歴を入力する薬剤師の認識や取り組みに差があった」と説明。診療報酬の一部を返納する方針。
薬剤師は、医師の処方箋に沿って調剤する際、患者ごとに服薬後の状況や副作用などを聞き取り、薬剤服用歴(薬歴)に記録する必要がある。副作用などの情報がずさんなまま薬を出していた疑いがあるが、同社は「現段階で患者の健康被害の報告はない」と説明している。
同社によると、2013年3月の社内調査で69店のうち48店で17万3515件の薬歴が未記載だったことが発覚した。薬剤師が患者から聞き取った内容をメモし、後にパソコンに入力する予定だったが、メモのまま放置されていた。同年8月までに入力は完了したという。
会見した同社の小川久哉社長は「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と謝罪。現在86店ある調剤薬局のうち10店を2月末までに閉鎖し、薬剤師の配置を見直す。
保管した薬歴に基づき患者に適正な指導をして薬を出せば、「薬剤服用歴管理指導料」として1回につき原則410円の診療報酬が得られる。診療報酬の請求の一部が不適切だった可能性がある。厚生労働省は詳細な報告を待ち、指導を検討する。
一方、親会社のツルハHDも10日、札幌市内で記者会見し、堀川政司社長が「当社の監督が徹底していなかった。再発防止策を講じ、二度と起こらないようにしたい」と陳謝。ほかのグループ子会社の調剤薬局は定期的に確認作業をしていたが、福太郎は管理体制がしっかりしているとの認識などから「任せきりになっていた」という。今後はツルハHDが監督機能を担うとともに、指導役となる薬剤師を同社に出向させる。