初めての就職活動は分からないことだらけ。直接企業に質問しづらいことも多いし、口コミ情報がどこまで信用できるかも不安だ。そんな悩みを解決する「就活探偵団」。就活生の疑問に答えるべく、あなたに代わって日経記者が企業に突撃取材します。
今回の質問は「売り手市場といわれますが、学歴フィルターは緩くなりますか」
書類選考などで下位校の就活生を振るい落とす「学歴フィルター」。就職氷河期には多くの就活生を泣かせたが、景気回復が鮮明になった15年卒採用ではフィルターは緩くなったとされる。大企業の業績回復は著しく、採用意欲も高まっている今シーズンはもっと緩くなるように思うが、実際に取材してみると意外にも……。
■安心するキャリセン
3月の説明会解禁を前にしても、どこか緊張感に欠ける今シーズンの就活戦線。「昨シーズンの楽だった就活を先輩から聞いているせいか、安心している学生が多く、就活セミナーの出席率は良くない」(中堅私大キャリアセンター)。「求人件数は1割以上増えていますよ。今は企業にとって厳しい『採用氷河期』なんじゃないですか」(別の中堅私大就職課)。学生だけでなく、一部の大学のキャリセンすら安心しきっている。
確かにデータを見る限りでは、今シーズンは売り手市場のように見える。
文部科学・厚生労働両省調査によると、昨年12月時点で15年卒内定率は3.7ポイント上昇の80.3%。リクルートキャリアの調査では4.3ポイント増の90.7%。人材コンサルティングのHR総研が昨秋に実施したアンケート調査でも、16年卒採用が「増えそう」が14%、「ほぼ同じ」が72%。普通に考えれば学歴フィルターは緩むはずなのに、学歴重視が復活しそうなのだ。
これは就活後ろ倒しの特殊要因が影響している。
「学内説明会中心に採用活動を進めていくが、今シーズンは採用実績のある大学を中心に10~15校で開くのがせいいっぱい。採用実績のない大学の就活生は不利だろう」。大手製造業の採用担当者はこう話す。
■大企業でも学内説明会は20校程度
近年の傾向として、大企業はレベルの違う様々な大学の学生が訪れる合同説明会より、取りたいと思う大学(=ターゲット校)の学生だけを相手にする「学内説明会」を重視する。企業は選考期間に余裕があれば、多くの大学で学内説明会を開き、下位校でも優秀な学生を見つけようとする。しかし、就活後ろ倒しの今シーズン、説明会解禁(3月1日)から内定式(10月1日)まで7カ月。説明会が12月解禁だった昨シーズンに比べて3カ月、選考期間は短くなってしまう。当然、足を運ぶことができる大学の数は限られてくる。
今シーズンはリクルーターを使った採用も復活の傾向にあるが、これも学歴フィルター復活に拍車をかけている。大手鉄鋼メーカーの採用担当者は「早稲田出身の社員なら早稲田生のリクルーターというように、OB出身校の学生につける。採用実績のない大学にリクルーターを送る余裕はない」という。こうなると採用実績のある大学の学生から内定枠が埋まっていくことになる。