【フランクフルト支局】独紙ビルト日曜版は29日、フランス南部の旅客機墜落で故意に機体を墜落させた疑いを持たれているアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)が網膜剥離の可能性があったと伝えた。視力の悪化で治療を受けており、6月の健康診断で操縦士としての適性が問われる恐れがあったとしている。
視力の問題については、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)も28日に報じている。捜査関係者は同紙に、視力の問題が心因性のものである可能性もあると指摘した。副操縦士が燃え尽き症候群や鬱病などの精神疾患を患っていた可能性は既に報じられている。
また、独仏などのメディアによると、ルビッツ副操縦士が自ら機長に操縦室からの退室を勧めていたことも、ボイスレコーダーの解析で新たに分かった。
機長が離陸前にトイレへ行く余裕がなかったと話したのに対し、副操縦士は「いつでも操縦を代わる」と申し出ていた。旅客機が巡航高度に入ると機長が副操縦士に着陸の準備を始めるよう指示した。副操縦士は短く返答して確認作業を済ませた後、機長に「もう(トイレに)行っても大丈夫です」と伝えた。
その後、機長は操縦室を離れ、それから8分間、旅客機は急激に高度を下げた。閉め出された機長は「いいかげんにしろ。開けろ」と怒鳴りながらドアを激しくたたいた。墜落までの間、副操縦士は一言も発することなく、呼吸の音だけが聞こえてきたという。
墜落現場で捜索作業を続けるフランス当局は29日、乗客乗員150人のうち78人のDNAを確保したことを明らかにした。捜査当局が遺体のDNA鑑定を行う。