香港の中心部を占拠していた「雨傘革命」中断の呼びかけで、雨傘がたたまれてから5カ月がたつ。彼らが訴えていた「真の民主化」への要求は何一つかなえられなかったが、この学生主導の運動は全面的な失敗ではなかった。しばしば金にしかとらわれていないと片付けられがちな町で、こうした抗議を目の当たりにした多くの人々は、若者の理想主義への熱意に魅せられた。
黄色い傘を持ち、政治改革を訴える人たち(22日、香港)=ロイター
学生たちは合法的政府への関心も示し、デモが平和裏に実施できることを証明した。デモ参加者はごみを片付けて教室を作り上げ、学業を怠っていないことを示した。香港政府はそうした占拠が無秩序だというイメージを作り上げようとしたが、学生たちはその逆を実証した。つまり、香港の社会は成熟しており、市民は真の民主化に参加できるということだ。
学生たちは勇敢であったとともに、予想通り抵抗勢力にもなった。動かしがたい標的は中国政府だ。中国共産党は、デモ隊が党を窮地に追い込むことは断じて許さなかった。党の立場からすると、それは恐ろしい前例をつくることになるからだ。市民が自由に自分たちの指導者を選ぶという思想もしかりだ。
■中国本土政府寄りの指名委が推薦
だが次に何が起こるだろうか。普通選挙を巡る議論は、一部が直接選挙枠で選ばれている香港の立法会(議会)での激しい攻防に移ってきた。70人の議員はこの夏、選挙制度改革の最終案を受け入れるか否かを決定しなければならない。
細部のいくつかを詰めている段階ではあるが、先週公表された基本概要は明らかだ。2017年の香港行政長官選挙の候補者は、中国本土政府寄りの1200人で構成する指名委員会での推薦を受ける。指名委の投票で過半数の支持を獲得する最大3人までが長官選に出馬できる。その段階でやっと、香港の有権者500万人がそのうちの1人を選ぶことができる。
反対派にとってこの制度はごまかしにすぎない。中国政府が認めない候補者は、第1段階ではねのけられる。公民党の梁家傑党首は、中国政府の高官が恐らくイランの宗教指導者アヤトラと同じ役割を担っていると、イランの「見せかけの投票」と呼ばれる選挙システムと比べて見せた。香港における民主化を支持する「民主派」議員27人は制度改革法案への反対を明言しているため、法案成立に必要な3分の2以上の賛成を確保できず、法案は通らない。とはいえ、民主派議員のうち4人が賛成に回れば制度改革法案は可決されることになる。