【ブリュッセル=森本学、赤川省吾】ギリシャの支援延長を6月末で打ち切ることを決めたユーロ圏の政府・中銀は27日夜、週明け29日の金融市場をにらんだ対応策を協議した。ギリシャを除く18カ国の財務相は「あらゆる措置をとる準備がある」との声明を公表。欧州中央銀行(ECB)も緊急理事会を開くことを確認した。
ギリシャが緊縮策の受け入れを国民投票に諮ることを打ち出したの受けて、ユーロ圏19カ国の財務相は27日午後、ブリュッセルの欧州連合(EU)本部に集まった。ここでまずギリシャへの資金支援を予定通り6月末で打ち切ることを確認。7月5日の国民投票まで支援延長を求めたギリシャの要請を退けた。
その時点でギリシャのバルファキス財務相が退席。それからギリシャを除く18カ国で議論を続行した。議題になったのは(1)ギリシャ国内の銀行の預金残高の推移(2)ギリシャが債務不履行(デフォルト)になった場合、ほかの南欧諸国への波及をどう防ぐのか(3)18カ国の緊密な連携策―などだった。
ただギリシャでの通貨ユーロの使用を禁止するなど、いわゆる「ユーロ離脱」については議題にならなかったようだ。会合後に記者会見したショイブレ財務相は「融資(を返せるかどうか)がユーロ圏にいることの条件ではない」と発言。仮にギリシャが国際通貨基金(IMF)などに資金を返済できない場合は、ユーロ圏に残留したままでの債務不履行(デフォルト)という扱いになるとの考えをにじませた。
欧州各国は事務レベルでの支援交渉も凍結したようだ。こうした現状をユーロ圏は28日中に主要7カ国(G7)を中心とする主要国の金融当局に伝える。
一方でECBは緊急理事会でギリシャへの資金供給を続けるか話し合う。ギリシャの銀行はECBによる「緊急流動性支援(ELA)」と呼ばれる資金繰り支援によって支えられている。これを停止するかが焦点となる。ECBは28日中に緊急声明を出す可能性がある。
このままギリシャが強硬姿勢を貫けば、29日はギリシャ国内の銀行は営業停止に追い込まれる可能性がある。外国為替市場でユーロ相場が乱高下したり、欧州株が急落したりする事態も想定される。資金繰りが行き詰まったギリシャの銀行や企業が連鎖倒産し、同国の経済が大混乱する恐れもある。
こうしたことを念頭に置くデイセルブルム議長(オランダ財務相)は27日夜、ギリシャを除くユーロ圏18カ国の財務相会合後、このまま金融支援が打ち切りになれば「ギリシャ政府は何らかの対応が必要なるだろう」と述べ、銀行不安などへの対応を迫られるとの見方をにじませた。そのうえで「ギリシャ議会が賢明な決定を下し、今の政治的な状況を変えることを願っている。交渉のドアはまだ開いている」とも述べ、同国の議会が国民投票の方針を撤回し、EUに歩み寄ることに期待をにじませた。