小田急電鉄は22日、農業事業に参入すると発表した。小田急グループの神奈川中央交通が相模原市内に持つ土地を利用し、糖度の高いミニトマトを生産する。栽培、収穫などは資本参加している農業ベンチャーの銀座農園(東京・中央)に委託し、将来はトマト以外の農作物の生産も視野に入れる。人口減に伴う鉄道利用者の減少をにらみ、事業の多角化を進める。
小田急電鉄はこれまで沿線で貸農園を運営してきたが、農業事業は初めて。神奈川中央交通が保有する約3700平方メートルの遊休地に農業用のビニールハウスを4棟建設する。2月1日に用地造成を始めており、5月末に施設整備を完了、11月中旬からの販売を予定している。年間19トンの収穫を見込んでいる。
病原菌を通さない特殊なフィルムを使った農法を採用する。ハウス内部に定点カメラやセンサーを設置するなどICT(情報通信技術)を活用し、労働者の負荷を軽減することで、人員を募集しやすくする。
収穫した農産物は小田急グループのネットワークを活用して販売する。収穫物は小田急グループが相模原市に隣接する愛川町で運営する物流センターに集約し、東京都や神奈川県で26店舗を運営するスーパー「小田急OX」などグループの店舗で販売する。
銀座農園は2007年設立の農業ベンチャーで、ミニトマトなど付加価値の高い農産物の生産ノウハウを蓄積している。国内だけでなくシンガポールやタイなどでも農場を展開するなど、東南アジアにも拠点を持っている。15年3月期の売上高は約3億7000万円。小田急電鉄は15年12月、銀座農園に出資しており、持ち分比率は8.1%。
今後は秦野市や伊勢原市など小田急沿線での事業拡大を検討している。銀座農園との業務委託を拡大し、パプリカやイチゴなど付加価値の高く、市場拡大が見込める農作物の生産も視野に入れている。銀座農園が持つ東南アジアのネットワークを生かし、農業以外での事業展開も検討するという。
小田急電鉄は今年1月には京都市内にホテル用の土地と建物を取得するなど、将来の人口減少を前提に、電鉄事業以外のビジネス拡大を進めている。