増税先送り問題の判断時期と今後の政治シナリオ
来年4月に消費税率を10%へ引き上げるかどうか、安倍晋三首相が判断する時期に注目が集まってきた。夏の参院選前に増税見送りを判断すれば、首相は参院選でその是非について民意を問う構えだ。参院選後に増税延期を決めた場合は、今年秋から冬にも国民の信を問う衆院解散・総選挙に踏み切る可能性もある。
首相は年明け以降の世界経済の減速などから、すでに消費増税の先送りを検討している。今月2日にはイタリア・フィレンツェで記者団に、増税の是非をめぐる判断時期について「主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で世界経済の状況をどのように認識するか議論し、よく精査していきたい」と表明。26、27日の伊勢志摩サミットの議論を踏まえる意向を示したが、最終判断の時期は明確にしていない。
判断時期が参院選の前か後かで、政権運営のシナリオは大きく変わる。夏の参院選前に判断する場合、政権は参院選を増税の是非について国民に問う機会と位置づける考えだ。
自民党内では当初、増税延期と衆院解散・総選挙はセットとみなす見方が大勢だった。首相が消費増税の見送りを表明し、夏の参院選に合わせて衆院選を行う衆参同日選で信を問うとのシナリオだ。
だが、熊本地震の発生により、首相は被災地への配慮から同日選見送りにかじを切った。与党内でも、増税延期と同日選の「セット論」を唱える声は下火となった。ただ、増税先送りは「選挙で追い風になる」(官邸幹部)との見方が強く、参院選前に増税先送りを表明して政権浮揚を図るシナリオが有力視される。参院選で与党が過半数を獲得して「勝利」とみなせば、その後の衆院解散の判断は時期に縛られず、首相は自民党の総裁任期満了(2018年9月)近くまでフリーハンドを握ることができるためだ。