書くこと、演じること、日々の暮らし。語り出すと、心の引き出しが開く=東京都港区
50歳にしてなお、人々をひきつけてやまないアイドルだ。30代で俳優としての実力をつけ、40代では文筆家としての評価も得た。50代に入り、さらに「制作者」の顔が加わった。
所属事務所とは別に、制作会社を立ち上げたのだ。映像、舞台、音楽など、幅広いジャンルで作品作りをめざす。「意欲あるスタッフといろんな企画を集め、実現していきたいなと思います」
その第一弾として、6~7月の舞台「日の本一の大悪党」では、出演に加え、演出とプロデュースに初挑戦する。「今後の活動のために、最初は自分が一番汗をかいて、作る側の苦労を実感したい。恥をかくかもしれないけれど」
自分が前に出るというより、裏方に回って、人を育てたいのだという。なぜ、そういう思いに至ったのだろう。
「日本のエンターテインメントが、全体的に迷子になっている気がするんです。作る人と見る人との間に大きな溝があるのでは」
たとえば若者離れが言われて久しいテレビ。地上波でも衛星波でも全ドラマの初回を見るほどのテレビ好きがこう言う。「作り手が若い人向けに番組を作っていても、若い人は果たしてそれを面白いと思うか。ちゃんと大人向けに作ったものを面白いと思うんじゃないかな」
作品はキャストの有名無名ではなく、内容のよしあしで評価してほしい、という思いもある。
「見る側と作る側が成熟した関係になっていくために、自分なりにちっちゃな石を投げられたらなぁと。なんか偉そうですけれど」
「残り時間」をはっきり意識したとき、「人生ががぜん面白くなった」という。あと10年はアクティブに生きるつもりだ。「先延ばしにしてきたことにいよいよ向き合わないと、時間が足りなくなるという実感があるんです」(文・林るみ 写真・外山俊樹)