中国本土からの旅行客でにぎわうマカオ特別行政区の菓子店で、客のスマホからアリペイの支払い情報を読み取る店員(右)=マカオ市内
中国に驚異的な速さで、本格的な電子マネー時代が訪れつつある。ネット通販から始まったIT大手の決済サービスは実店舗へも広がり、取引額は日本の数十倍とみられる。中国の既存金融機関の不便さもあり、金融とITを融合した新サービス「フィンテック」の優位性が際立っている。
「財布の中身は気にするな、スマホの電池が足りてりゃ良い」。浙江省・杭州。ネット通販最大手、アリババグループが本社を置くこの街に、こんな言い回しが生まれている。市内の隅々まで、電子マネー「支付宝(アリペイ)」を使える仕組みが行き渡り、スマートフォンさえあれば支払いが済むからだ。飲食店では一人が代表してスマホで支払い、その後全員がやはりスマホで代金をやり取りすれば、現金を介さずに「割り勘」にできる。
アリペイは2003年、アリババが始めた決済サービスだ。当初は始まったばかりのネット通販を補助する仕組みだった。「お金を支払ったのに業者が商品を送らない」といった問題を解決するため、アリババが間に入ってお金を電子マネーの形で預かり、商品の受け渡しを待ってお金を動かすようにした。
アリババ以外のネット通販にも使われるようになり、アリペイの口座数も急増。09年からは携帯電話からの支払いもできるようになり、口座数は4億5千万を超える。アリペイ運営会社は未上場だが、企業価値は600億ドル(約6・5兆円)と、中国の大手国有銀行に並ぶとみられている。
最近は、ネット通販から実店舗へも活用が広がっている。大手スーパーやコンビニではレジに専用のスキャナーを備え、利用客のスマホから支払い情報を読み取る。小さい商店や屋台でも、2次元バーコードを印刷した紙を置いておけば、客がそれをスマホで読み取ることで支払いができる。アリペイ運営会社の朱以師・広報担当役員は「自分もここ半年、現金を使っていないよ。間もなく北京や上海も同じ状況になる」。