韓国ロッテグループをめぐるソウル中央地検の捜査
韓国検察による韓国ロッテグループの捜査が大詰めを迎えた。検察は、同グループが系列社間の不正な取引で秘密資金を捻出し、政界工作などを行ったとみている。創業家や幹部の横領行為を立証して核心に迫る方針だが、捜査は難航しているとの見方も出ている。
ソウル中央地方検察庁は1日午前、韓国ロッテグループの創業者、辛格浩(シンギョクホ)氏=日本名・重光武雄=の長男、辛東柱(シンドンジュ)氏=同・重光宏之=を横領の疑いで事情聴取した。検察によれば、同氏は昨年までの10年間、系列社から約400億ウォン(約37億円)の給与を受け取った事実を認めた。検察は実態のない仕事への報酬で横領にあたるとみている。辛東柱氏は故意ではなかったと説明しているという。
検察は6月に強制捜査に着手。辛格浩氏の長女の辛英子(シンヨンジャ)・ロッテ奨学財団理事長を80億ウォン余の横領罪などで、グループ系列企業の前社長を脱税の罪でそれぞれ起訴した。
辛格浩氏に対しては、数千億ウォンの日本のロッテホールディングス(HD)の持ち株を辛英子被告ら3人に贈った際、贈与税が払われていないと判断。今後、脱税の疑いで書面か対面で調べる方針だ。最終的には、次男で韓国ロッテグループ会長の辛東彬(シンドンビン)氏=同・重光昭夫=を横領や背任の疑いで聴取するとみられる。
検察はこうした個別の横領や背任行為が、秘密資金作りにつながった可能性があるとみている。韓国メディアは、同グループが李明博(イミョンバク)前政権時代、ソウル南東部に建設中の123階建ての巨大商業施設「第2ロッテワールド」の許認可をめぐり、政界工作を行った可能性を報じている。
これに対し、李政権当時の元政府高官は「許認可は韓国経済の発展に必要だったから。権力型犯罪につながるような金銭の授受はなかった」と語る。8月、聴取直前に自殺した李仁源同グループ副会長は遺書で秘密資金の存在を否定した。
検察は、捜査は、グループの経営を巡る辛東彬氏と辛東柱氏の争いが大きな契機となったとしている。元高官は「敗れた辛東柱氏から検察に様々な情報提供があったのではないか」とみる。政界では、捜査が李前政権関係者を牽制(けんせい)したい朴槿恵(パククネ)政権の意向を受けた捜査だと疑う声も出ている。
検察は今月中には捜査を終えたい考えだが、秘密資金の立証が難航している模様だ。司法関係者の間では、最終的に辛東柱氏の在宅起訴程度で終わるとの見方も出ている。(ソウル=牧野愛博)