■漫画家の浦沢直樹さんの話
ボブ・ディランさんにノーベル文学賞 音楽家・作詞家
特集:ボブ・ディラン
ボブは、「究極のうまいこといい」だと思う。俳句とか短歌につながる。行間を作り出したり、韻を踏んだりが非常にたくみ。音楽なので、メロディーに乗せる詞としてどうなのか。乗っかる文字数に限界があるわけで、ラップの創始者とも言える。あるメロディー、リズム、韻を踏むといったことをしながら、どのぐらいうまいことが言えるかの開拓者だと僕は思っている。
どういう位置からものを見るか。その姿勢に影響を受けた。右でも左でもない、何か、私たちが気づいていなかった位置から、ぽーんと言ってのける、言葉の選び方。「風に吹かれて」も、キューバ危機の時、議論の結論が出ない状況をカフェで小耳にはさみながら、「答えは風に吹かれている」と言葉を紡いだ。意外な位置、視点から、的を射たことを言い、はっとさせる。僕も、今まで誰も見たこともない位置から、作品を描きたいと思っている。(河村能宏)