韓国政府は年内にも、日韓の防衛情報を共有する基礎となる「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を締結する方針を固めた。日本側の要請に応じた。韓国政府関係者が明らかにした。北朝鮮の核・ミサイルの脅威が現実となるなか、日韓の防衛協力強化が不可欠と判断した。
日韓GSOMIA締結で、東アジアで日米韓の安全保障協力がより強化される。日韓が独自に防衛情報を交換することで、米軍が提供する軍事情報の相互確認も可能になり、米国主導だった安保協力で日韓の発言力が増すことにもなる。
韓国は2012年6月、日本とのGSOMIA締結に向けて手続きを進めたが、歴史認識問題を巡る反発から、署名式の寸前になって延期した。だが昨年末、朴槿恵(パククネ)政権で日韓関係が停滞する原因になった慰安婦問題で日韓が大筋合意し、GSOMIA締結に向けた機運が高まっていた。
韓国国防省当局者は27日、北朝鮮が今年、2度の核実験を実施したほか、20発以上の弾道ミサイルを発射したことに言及。「実務的に検討した結果、本日(GSOMIA締結に向けた)協議を再開する立場を発表する。可及的速やかに締結したい」と語った。
韓民求(ハンミング)国防相も14日、日韓GSOMIAについて「北朝鮮の核・ミサイルの(深刻化した)状況に至り、必要性が高まった」と語っていた。
韓国政府は既に米政府に対し、年内に日韓GSOMIAを締結する考えを伝えた。今後、韓国国会などに締結の必要性について理解を要請。そのうえで、12年に作ったGSOMIAの締結案を基礎に署名する方向で日本側と協議する。
韓国側は今後、GSOMIAと共に12年に延期した物品役務相互提供協定(ACSA)の締結も急ぎたい考えだ。
日本側は様々な会談の場で締結を要請。日本政府関係者は27日、「韓国の方針を歓迎する」と語った。
韓国は日韓GSOMIA締結によって、北朝鮮軍潜水艦の発見や弾道ミサイル防衛で効果的な情報協力ができるとしている。朝鮮半島有事の際、自衛隊による米軍の後方支援や捜索救難などに情報を提供し、効率的な活動を助けることもできるようになる。
一方、韓国国会は今週、朴槿恵大統領が民間人女性に機密文書を渡していた問題で紛糾。来年末の大統領選を巡った思惑もからんでGSOMIA締結に最後まで反対する意見もあり、締結は最後まで予断を許さない状況だ。(ソウル=牧野愛博)
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《軍事情報包括保護協定(GSOMIA〈ジーソミア〉)》 政府間の防衛関係の秘密情報の交換を円滑にするための枠組み。情報の種類別にアクセスできる人を限定したり、書類や電子情報などの形態ごとに保管方法をルール化したりする。事前の承認なしに、第三国に情報を提供したり、目的外で使ったりすることを禁じる。日本は米仏豪などと、韓国は米英ロなどと、それぞれ個別のGSOMIAを結んでいる。