定年後に再雇用されたトラック運転手の男性3人が、定年前と同じ業務なのに賃金を下げられたのは違法だとして、定年前と同じ賃金を支払うよう勤務先の運送会社「長沢運輸」(横浜市)に求めた訴訟の控訴審判決が2日、東京高裁であった。杉原則彦裁判長は、「定年後に賃金が引き下げられるのは社会的に受け入れられ、一定の合理性がある」と判断。運転手側の訴えを認めた一審・東京地裁判決を取り消し、請求を棄却した。
今年5月の一審・東京地裁判決は、「業務の内容や責任が同じなのに賃金を下げるのは、労働契約法20条に反する」として、会社に定年前の賃金規定を適用して差額分を払うよう会社に命じた。
しかし高裁判決は、再雇用者の賃金減額について「社会の実相として一般化している」と指摘。定年に達した高齢者の雇用確保が義務づけられたことで、企業の賃金コストの増加を避け、若者を含めた安定的な雇用を実現するために賃金の減額が行われてきたことは「それ自体が不合理とは言えない」と述べた。
また、60歳以上で賃金が低下した場合の給付制度があり、退職金を支払って新しい雇用関係を結んでいることなどを考慮し、今回のケースでは「定年前の2割前後の減額が、直ちに不合理だとは認められない」と判断。「労働契約法に違反しない」と結論づけた。