水上勉(1919~2004)。99年、長野県北御牧村(当時)で
■文豪の朗読
《水上勉が読む「越前竹人形」 島田雅彦が聴く》
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私より四十二歳年長の水上勉氏とは何度かお目にかかったことがあり、その圧倒的な存在感を前に萎縮するしかなかったが、水上氏の方は若者が好きなようで、きさくに世間話を振ってもらえたし、持っていたトートバッグを褒めると、中身を紙袋に入れ替えて、「持ってけ」と譲ってくれるような人だった。近代文学はもてない男の系譜だといわれながら、いつの時代も絶えることなくダンディ文士が活躍していた。カミソリのような芥川、ナルシスト全開の太宰、戦後派では大岡昇平、埴谷雄高のインテリ・ダンディ、これらの系譜から水上勉を外すわけにはいかない。若い頃のギラギラした感じは映画『飢餓海峡』の主演俳優三国連太郎のイメージと重なるが、私が知っている「勉さん」は白髪の前髪が一筋額にかかる憂い顔の老イケメンだった。
好奇心旺盛な人で、手ずから骨…