路上を裸で徘徊(はいかい)したとして、公然わいせつ罪に問われた埼玉県川口市の30代の会社員男性に対し、さいたま地裁は9日、無罪(求刑懲役5カ月)を言い渡した。男性は、事件現場から離れた所で半裸だったことは認めたが、現場にいたことは否認。横山泰造裁判官は、目撃者が見た全裸の男を男性と認めるには「合理的疑いが残る」と述べた。
男性は昨年5月19日夜、さいたま市浦和区針ケ谷1丁目の路上で、全裸で徘徊したとして起訴された。
検察側は、目撃者の女性の証言などから、男性が全裸で徘徊したと主張。女性は「男の頭はマスクのようなもので覆われていた」と証言していた。弁護側は、男性が目撃場所から約180メートル離れた場所でカーディガンと目出し帽以外の衣類を脱いだことは認めたが「目撃場所にはいない」と無罪を主張していた。
判決は、目撃証言は信用できるとしつつ、男性の目出し帽などが目撃証言の男のものと一致するとは「認めるに足りない」と判断した。
男性は脱いだ衣類などをパトカーに回収され、妻に電話をかけたという。判決後、横山裁判官は「夜中に呼び出された気の毒な奥さんの気持ちも考え、疑われる行為をしていたことは反省してください」と述べた。
弁護人は「思い込みの捜査はあってはならない」と話した。さいたま地検の葛西敬一次席検事は「判決を精査し、適切に対処したい」とコメントした。(佐藤祐生、小笠原一樹)