電動立ち乗り二輪車で売り場内を移動する家電量販店「ノジマ」の女性店員=東京都江東区
車輪付きのボードに立って乗り、体重移動で操縦できる「電動立ち乗り二輪車」。米国の歌手らが乗っている様子をインターネット上で公開するなどし、日本でも人気を集めている。しかし、国内では法律で規制され、公道での走行は原則的に認められていない。取り扱いには注意も必要だ。
東京都内のショッピングモールにある家電量販店「ノジマ」。女性店員は店内を電動立ち乗り二輪車で移動していた。白い車体で、大きさは幅約60センチ、重さ約10キロ。重心を前後左右にかけるとセンサーが反応し、前進やバック、方向転換ができる。バランスが取りやすい「ビギナーモード」の機能もある。
インターネットの通信販売で人気を集めたのを受け、ノジマでも今年9月から約5万円で販売を開始した。遊具として買い求める親子のほか、倉庫内での移動手段など、企業が業務用に使う例もあるという。
ハンドルがなく、ボード状の電動立ち乗り二輪車は、主にネット上で「ホバーボード」「バランススクーター」などの名称で、多くの業者が輸入販売している。茨城県のネット販売会社によると、昨年末から人気が出始め、現在は月800~1千台を販売。クリスマスシーズンを迎え、今月1日に入荷した約900台はすでに完売したという。
■発火事例も
人気を集めているが、原則的に日本国内で公道は走れない。車両に分類されるため、道路運送車両法の基準を満たさなければならず、バックミラーやライトなどの取り付けが義務となる。違反したまま公道を走行すれば、整備不良の車両に該当する。
違法を指摘されたケースもある。兵庫県宝塚市で今年3月、市道を走行していた20代の男性が、無免許で整備不良車を運転したとする道路交通法違反の疑いで県警に書類送検された。
火災も起きた。大阪府警などによると、大阪府守口市で今年5月、玄関先で充電していた電動立ち乗り二輪車が何らかの原因で出火し、木造住宅が全焼した。住民の40代女性によると、子どもの遊び道具として約1カ月前にネット通販で約1万5千円の中古品を購入していた。販売した東京都内の業者は過去に同様の発火事故はないとし、「製品に問題はない。注意事項を守って使用すれば安全」と主張する。
米国消費者製品安全委員会によると、米国では2015年12月~16年2月に24の州で計52件の発火事例があったという。そのため「安全基準を満たしていない製品は、発火する危険性がある」と注意を呼びかけている。
■移動支援ロボットとは別もの
これら電動立ち乗り二輪車について、ネット通販のサイトによっては、米セグウェイ社が開発したハンドルがある立ち乗り型の移動支援ロボット「セグウェイ」にあやかり、「ミニセグウェイ」などと称するものもある。しかし、これらは見た目も価格帯も異なり、全く別のものだ。
セグウェイジャパン社によると、これらの製品と「セグウェイ」は一切関係はないといい、ホームページなどで「形状のみならず、品質も大きく異なる」と注意も呼びかけている。「セグウェイ」は国内で法人向けしか販売しておらず、ショッピングモールなどでの警備、敷地の広いメガソーラー発電所やゴルフ場での移動などに使われているという。
国土交通省は「セグウェイ」を含む立ち乗り型の移動支援ロボットについて、高齢者の移動手段や観光ツールとして注目。茨城県つくば市などでは、近距離移動の手段としての普及を目指し、特区制度を活用した公道での実証実験もしている。