埼玉県朝霞市で昨年9月、男性を絞殺して金を奪ったとして、強盗殺人などの罪に問われた当時県警巡査部長の中野翔太被告(33)=同県川越市、懲戒免職=の裁判員裁判で、さいたま地裁の佐々木直人裁判長は20日、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。
判決によると、中野被告は昨年9月3日、現金を盗もうと、朝霞市の無職寺尾俊治さん(当時58)宅に侵入。在宅していた寺尾さんを殺害して現金を奪おうと、縄状のもので首を絞めて殺害し、現金約117万円などを奪った。
公判で弁護側は、首を絞めたのは寺尾さんの大声を止めるためで、殺意はなかったなどとして「傷害致死と窃盗の罪にあたる」と主張。佐々木裁判長は、遺体の状況などから「首を絞めた行為は人を死亡させる危険性が高いもの」などと殺意を認定。「不倫相手と同居していたアパートの家賃を滞納するなど金銭に窮し、強盗殺人の動機となりうる事情があった」とも指摘し、弁護側主張を退けた。
その上で「警察官として被害者方で業務にあたった際に多額の現金があると知ったことを利用し、非難の程度は強い」と断じた。
判決後、取材に応じた裁判員の一人は「警察という組織は私たち国民にとって大事な組織。(今回の事件で)信頼が揺らいだ」と述べた。別の裁判員は「今現場で頑張っている警察官に良い部分をもっと出してもらえれば」と話した。
県警の佐伯保忠首席監察官は「改めて被害者、ご遺族に深くお詫(わ)び申し上げます。判決を厳粛に受け止め、県民の信頼回復に向けて取り組んでまいります」とのコメントを出した。(小笠原一樹)