中学校の入学祝いをもらって喜ぶ村川康嗣さん=2009年3月、弘美さん提供
8年前に中学1年だった長男を柔道部の練習で亡くした女性が、部活動や体育での無理な練習による事故を防ごうと、他の遺族らと新たな団体を立ち上げた。長男は生きていれば先月、成人式を迎えたはずだった。「生きていた証しをつくりたい」。そんな思いが女性の背中を押している。
柔道の部活中、昨年以降3人死亡 大外刈りが事故で最多
東京都八王子市の保育士、村川弘美さん(49)。自宅の棚にはいま、亡くなった康嗣(こうじ)さん(当時12)の写真のそばに、大学入試の受験票が置かれている。合格発表を待つ、康嗣さんの2歳年下の高校3年の妹(18)のものだ。村川さんは「『見守っててや』って手を合わせています」と話す。
2009年7月29日のことだった。康嗣さんは通っていた滋賀県愛荘(あいしょう)町立秦荘(はたしょう)中学校で柔道部の練習をしていた。5月に入部したばかり。武道場は気温30度を超えていた。実戦形式で技をかけ合う「乱取り」で、上級生から約50分間技をかけられ続けた。その後、顧問に返し技をかけられて意識不明に。約1カ月後、急性硬膜下血腫で息を引き取った。
康嗣さんはぜんそくの持病があり、小学生の時はほとんど運動ができなかった。中学に進み、「運動部で体力をつけたい」と柔道部を選んだ。「クラスメートに誘われた」とうれしそうに話していた姿を村川さんは覚えている。村川さんは「この子のペースでやらせて」と顧問に頼んでいたが、練習メニューは他の部員と同じだったという。
妹を町の中学校に通わせたくな…