犯罪の計画段階で処罰する「共謀罪」の要件を変えた「テロ等準備罪」をめぐり、政府が今国会に提出する法案の概要が判明した。対象犯罪はテロの実行や薬物などの5分類で計277種類。法定刑は共謀した罪の重さに応じ、「懲役・禁錮5年以下」または「懲役・禁錮2年以下」とする。
政府が締結をめざす国際組織犯罪防止条約(TOC条約)は、4年以上の懲役・禁錮の刑を定める「重大な犯罪」について、犯罪の合意(共謀)などを処罰できる法律を制定するよう各国に求めている。日本にはこの条件に当てはまる犯罪が600以上ある。
政府は今回、「組織的な犯罪集団が関わる重大な犯罪」に限定しても、条約の規定で許されると解釈。重大な犯罪の中から「組織的犯罪集団の関与が現実的に想定される罪」だけを対象に選び、277に絞り込んだ。①組織的な殺人や放火など「テロの実行」(110罪)②覚醒剤の輸出入や譲渡など「薬物」(29罪)③人身売買や強制労働など「人身に関する搾取」(28罪)④組織的な詐欺や通貨偽造など「その他資金源」(101罪)⑤偽証や逃走援助など「司法妨害」(9罪)――の五つに分類した。
適用対象は、犯罪の実行を目的に集まった「組織的犯罪集団」が、指揮命令に従って任務を分担して犯罪をする場合と規定。2人以上で計画し、資金や物品の手配、関係する場所の下見などをした場合などに適用するとした。10年を超える懲役・禁錮刑を定める罪を共謀した場合は「懲役・禁錮5年以下」、4~10年の懲役・禁錮刑を定める罪を共謀した場合は「懲役・禁錮2年以下」とする。
法務省は24日、自民、公明両党の幹部に法案を説明。両党の審査は28日から始まるが、公明党は初日から全議員対象の説明会を予定する。政府は3月10日の閣議決定をめざしているが、両党の了承手続きが間に合うかは微妙な情勢だ。(金子元希、久木良太)
■「テロ等準備罪」の対象犯罪の内訳(計277)
①テロの実行(110)
組織的な殺人、現住建造物等放火、ハイジャック、拳銃などの発射、サリンなどの発散、流通食品への毒物の混入
②薬物(29)
覚醒剤やコカイン、大麻などの輸出入・譲渡
③人身に関する搾取(28)
人身売買、集団密航者の不法入国、強制労働、臓器売買
④その他資金源(101)
組織的な詐欺・恐喝、通貨・有価証券の偽造、犯罪収益等隠匿
⑤司法妨害(9)
偽証、組織的犯罪の証拠の隠滅、逃走援助