夏目漱石自筆の「吾輩は猫である」の印税領収証=天理大学付属図書館蔵
今年生誕150年を迎えた文豪・夏目漱石自筆の「吾輩は猫である」単行本の印税領収証が14日から、東京都内で初公開される。現行の「漱石全集」(岩波書店)には未収録で、漱石自筆の印税領収証は珍しい。明治の出版や文豪の金銭事情がうかがえる。
特集:夏目漱石
連載「吾輩は猫である」
領収証は「猫」の版元の一つ、服部書店の主人宛てで、1907(明治40)年8月24日付。「猫」上中下の全3編、997円50銭(現在の約1千万円弱)分について、「右六千部の印税として受領致候也」とし、漱石の署名と押印がある。天理大学付属図書館が昭和40年代に入手した夏目漱石関連資料に含まれていた。
漱石は1907年7月末、門下生の鈴木三重吉に宛てて、「昨日服部の印税未納をしらべたら八百円程ある」「服部も通知を受けて驚いたろう」と書いている。今回、漱石が催促した印税を確かに受領したことが裏付けられた。また、重版が千部単位で行われたことや、印税率が本の定価に対して平均20%弱だったこともわかった。
この領収証を調べた清水康次・…