大会連覇を決め、喜びを爆発させる大阪桐蔭の応援団=2018年4月4日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場
(4日、選抜高校野球 大阪桐蔭5―2智弁和歌山)
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ゲームセットの瞬間、三塁側の大阪桐蔭のアルプス席では、応援団のメンバーが互いに抱き合って喜びを爆発させた。「日本一!」「よくやった!」。36年ぶりの春連覇の偉業をたたえた。
試合は同点で迎えた七回裏1死二塁の好機に、宮崎仁斗(じんと)君(3年)が打席に立った。父の剣一さん(44)は「とにかくつないでくれ」と願いながら、メガホンで声援を送った。宮崎君が左前に勝ち越しの適時打を放つと、周りから「おめでとう」と声をかけられ、互いに喜び合った。「大事なところで1本打ってくれた」
八回裏には、4番の藤原恭大(きょうた)君(3年)の適時二塁打などで2点を追加。父の史成さん(42)はこれまで、藤原君が右ひざのけがで普段のプレーができていないと感じていた。「いつもの闘志あふれるプレーが見られた。弱音を吐かず、よく頑張っている」とほめた。
3点リードで迎えた最終回。投手の根尾昂(あきら)君(3年)がアウトを一つとるたびに、母の実喜子さん(51)はほかの保護者らとハイタッチを交わした。根尾君は最後の打者を内野ゴロに打ち取り、自ら一塁ベースを踏んで試合を決めた。実喜子さんは「仲間を信じて堂々と投げてくれた」と目を細めた。父の浩さん(51)は「よくやった。チームのみんなのおかげです」。目に涙があふれた。
優勝の瞬間を見守っていた主将の中川卓也君(3年)の父の貴光さん(45)は「春連覇を目指してここまでやってきた。成長した姿が見られて良かった」と喜んだ。
選手たちが校歌を歌い、アルプス席に駆け寄ると、大きな声援と拍手が巻き起こった。昨春の優勝メンバーだった香川麗爾(れいじ)さん(18)は「次は自分たちができなかった春夏連覇を達成してほしい」。同じく優勝メンバーの坂之下晴人(はると)さん(18)は「努力してきたことを自信にかえて戦っていた。夏の大会に気持ちを切り替えて頑張って」と期待を込めた。
一塁側の智弁和歌山のアルプス席からは試合終了の瞬間、大きなため息が漏れた。選手たちが整列すると、1千人を超える生徒や保護者らの大応援団は「ようやったぞ」「ありがとう」と熱戦をねぎらった。
チアリーダーの伊藤杏(あんず)さん(3年)は、開門と同時に名物「C」の人文字を作るため、真っ赤な上着と帽子を手早くアルプス席に並べて準備した。受験を控え、チアリーダーは今大会で引退する。「最後に大舞台を経験できた。野球部に感謝です」
試合は激闘となり、応援団も熱くなった。吹奏楽部は相手を惑わす「魔曲」とも言われる「ジョックロック」を演奏した。
四回に東妻(あづま)純平君(2年)の左前適時打で2点を先取すると、アルプス席は大歓声に包まれた。母の千穂さん(46)は「体調を崩しているような話も聞いていたけれど、タイムリー(適時打)とは。よく頑張ったねと声をかけたい」と涙を浮かべた。
試合終了後、上宮(大阪)の主将として65回大会で優勝経験がある黒川史陽(ふみや)君(2年)の父の洋行さん(43)は「自分に続いて優勝してほしいという思いもあった。今度は夏を制覇して、父を超えてほしい」と話した。
中学時代に林晃汰(こうた)君(3年)や神先恵都(かんざきけいと)君(3年)らを指導したボーイズリーグの監督の玉田昌幹さん(46)は「夏に悔しい思いをしないように、もう一度鍛え直して欲しい」と次の活躍を期待していた。
応援団の平林夏依(かい)君(3年)は、この試合を最後に引退する。応援団の伝統で感情は表に出さないのが決まりだが、「うれしさや悔しさ、いろんな感情がこみあげてきた。夏はリベンジできるように、後輩に思いを託したい」と球場を後にした。(三浦淳平、石川友恵、坂東慎一郎、渡辺元史)