沖縄県浦添市で発掘された銃の残骸(倉石寛さん提供)
沖縄の伝統芸能「エイサー」とゆかりが深い福島県いわき市の菩提(ぼだい)院で、23日から、沖縄戦の遺品展が開かれる。「慰霊の日」を迎えるにあたり、激戦地跡で今も続く遺品収集を支援する学生ら有志が、東日本大震災の被災地と沖縄をつなごうと企画した。
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東京大学1年の西尾慧吾さん(18)は2年前、在学していた灘高校=神戸市=の修学旅行で現地を訪れ、沖縄戦に関心を持った。遺骨と陶器が米軍の火炎放射器の高熱で溶け合わさった破片を見た時、西尾さんは自分のそれまでの無関心を恥じたという。
同校元教諭の倉石寛さん(71)らとともに、激戦地跡で遺品や遺骨の収集を約60年続ける国吉勇さん(78)を支援しながら、西日本を中心に遺品展を開いてきた。
菩提院は沖縄との縁で知られる。同院を開いた浄土宗の高僧袋中上人(たいちゅうしょうにん、1552~1639)は1603年、中国へ渡ろうとして果たせず、琉球へ上陸。約3年間の滞在中に広めた踊り念仏が、エイサーの源流の一つになったとされる。国吉さんの支援者に東京電力福島第一原発事故の収束作業を経験した人がいて、同院での開催を紹介された。
西尾さんは、沖縄戦の実相が伝わらないのは、自分も含めた「無意識の差別」が大きな原因だと感じている。「国から負担を強いられてきたことなど、福島と沖縄の共通点について考えたい」。西尾さんは、戦跡の詳細な情報を記録に残すため、国吉さんへの聞き取りを一緒にできる人を募っている。
25日まで。入場無料。26日以降は関西を巡回する。問い合わせは遺品展事務局(090・8393・6308)。(編集委員・永井靖二)