温暖化がこのまま進むと、今世紀後半には世界各地の空港で、離陸する航空機の1~3割に重量制限が課されたり、涼しくなるまで離陸を待ったりすることになりそうだ。気温が高くなると空気が薄くなり、揚力が得にくくなるためという。米コロンビア大などの研究チームの論文が13日、科学誌クライメート・チェンジ(電子版)に掲載された。
航空機は滑走して翼の周りに空気の流れを作り、揚力を得て離陸する。気温が上がると空気の密度が下がり、揚力を得にくくなる。
研究チームは、各空港の最高気温が産業革命前より今世紀末までに4~8度上昇するシナリオをもとに研究。米国や欧州、南アジアなど世界19の空港ごとに、ボーイングとエアバスの5機種について、温暖化による気温上昇が航空機の離陸にどう影響するかを評価した。
その結果、暑い日の日中には、離陸しやすくするための重量制限で、1~3割の飛行機の燃料や貨客などを最大4%減らす必要が出るとした。160人乗りの場合、搭乗人数を12~13人減らすことになり、航空各社の経営にも影響が出る。
温暖化で揚力が不足しやすいのは、標高が高く空気密度が低い空港や、滑走路が短い空港、元々の気温が高い空港だ。国際民間航空機関(ICAO)によると、すでに気温が高い中東や標高の高い中南米の空港で、長距離便の離陸を夕方や夜に移すなどの対策が取られている。6月には、米アリゾナ州フェニックスの空港で、45度を超える気温が予想され、アメリカン航空の40便以上が欠航した。
温暖化による航空機への影響は、ジェット気流の変化による航行時間、乱気流の増加などのほか、海面上昇による海沿いの空港への影響が知られている。(香取啓介)