違法残業事件の判決を受けた記者会見を終え、会場を後にする電通の山本敏博社長=6日午後3時33分、東京都千代田区の司法記者クラブ、飯塚晋一撮影
社員の違法残業を防ぐ措置を怠ったとして、労働基準法違反の罪に問われた法人としての広告大手・電通(東京)に対し、東京簡裁(菊地努裁判官)は6日、検察側の求刑通り罰金50万円の有罪判決を言い渡した。会社を代表して出廷した山本敏博社長(59)は9月の初公判で起訴内容を認めて謝罪しており、罰金刑が確定する見通し。
「顧客ファースト」残業常態化生む 電通裁判で検察指摘
判決によると、電通では、過労自殺した新入社員の高橋まつりさん(当時24)を含む社員4人が2015年10~12月、「36(サブロク)協定」で定めた上限を最大で月19時間超過して違法に働いていた。電通は違法状態に対し、必要な防止措置を取るのを怠った。
菊地努裁判官は判決で、高橋さんの過労自殺に言及。「尊い命が奪われる結果まで生じていることは看過できない」と述べた。さらに、電通が労働基準監督署から違法な長時間労働を指摘された際に、残業時間の上限を労使で定めた「36(サブロク)協定」の上限時間を引き上げていたことについて「形式的に違法状態を解消しようとする対応に終始した」と批判した。
そのうえで、電通の違法残業について「労働時間削減の具体的対応は各労働者や部長らに任されており、サービス残業が蔓延(まんえん)するなど労働環境の一環として生じた」とし、「刑事責任は重いと言わざるを得ない」と述べた。
一方で、菊地裁判官は「電通の社会的信用は低下し、業績も落ちるなど社会的制裁を受けており、再発防止策も講じている」と指摘。罰金額について、他の労基法違反事件の量刑を考慮したと説明した。
事件は、東京区検が7月、法人としての電通を労働基準法違反の罪で略式起訴したが、東京簡裁が非公開の書面審理だけで結論を出すのを「不相当」と判断し、正式裁判が開かれていた。(長谷文)