女子1500メートルで国内最高記録を出して優勝した高木美帆=細川卓撮影
(20日、スピードスケート全日本距離別選手権)
高木美帆、圧巻のV2 スピードスケート全日本距離別
「高木選手はスペシャリストだから」。女子1500メートルで過去4度優勝の小平奈緒がそのタイムを見てうなった。1分55秒44。自身が持つ国内最高記録を0秒63塗り替えた高木美は、「守りに入らず、やってきたことを信じられた」。右手を突き上げ、喜んだ。
序盤から攻めた。最初の300メートルを25秒59で通過。700メートルまでの400メートルは28秒41、次も29秒台で回った。出場選手中、最速ラップだ。終盤に失速する恐れもあった。それでも、世界で戦うためにあえて挑んだ。
最後の400メートルもただ1人、31秒台をマーク。「乗り越えられた」。自らに課した重圧に打ち勝った。
15歳で2010年バンクーバー五輪に出場しながら14年ソチ五輪の出場を逃し、「すべてをかける」と覚悟を決めた。昨季はこの種目でワールドカップ初優勝を果たし、世界距離別選手権では3位に入った。一方で、苦悩も増えた。「成績を残せば残すほど失敗できない思いも強くなっていった」と明かす。
支えになったのは日々のトレーニングだ。筋力強化で馬力がつき、一歩で押す力が増した。本来の効率のいい滑りにパワーが備わった。「過信してはいけないけど、地力がついた」。女子中長距離を引っ張る23歳の覚悟のシーズンが最高の形で幕を開けた。(榊原一生)