放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は21日、CBCテレビ(名古屋市)が報道番組内で特集した第2次大戦中に多くのユダヤ人を救った外交官・杉原千畝の出生地をめぐる内容について、審理入りすると発表した。
対象は、2016年7月~17年6月、東海圏で流れる報道番組「イッポウ」(月~金午後4時50分)で計10回放送された特集。岐阜県八百津町が、ユダヤ人救出のために千畝が発給したビザなどの資料類をユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の記憶」に登録申請したのを受け、本人の手記とされる中で出生地として書かれた「加茂郡八百津町」の文字に関して筆跡鑑定士らが「千畝のものと違う」と指摘した。
特集は、千畝の親族が取り寄せた戸籍謄本には、出生地として「武儀郡上有知(こうずち)町」(現在の美濃市)と表記されていたことも含め、「八百津生まれ」の通説に疑義が生じているとする内容だった。
これに対し、この手記を管理するNPO法人「杉原千畝命のビザ」やその理事らが、偽造文書と決めつける発言をCBCがそのまま放送したとして理事らへの名誉毀損(きそん)にあたると申し立てた。
委員会は話し合いなどでの解決を模索したが、双方の主張は折り合わなかったという。CBCは1月30日付で書面を委員会に提出。「偽造文書と決め付けるような放送は行っていない」として訂正を放送する考えはないとの意思を示した。
CBCの担当者は取材に「申立人とは、昨年6月以降、話し合いを続けてきたが、説明にご理解をいただくことができなかった。今後はBPOの審理を見守りたい」と話した。(小峰健二)