昨夏の全国選手権の七回、智弁和歌山の平田(右)の暴投で大阪桐蔭の泉口が生還し、勝ち越し点を挙げる
(4日、選抜高校野球・決勝 智弁和歌山―大阪桐蔭)
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3日の準決勝第1試合で延長戦を制した智弁和歌山の選手らは、宿舎に引き揚げた。そして午後4時49分、大阪桐蔭がサヨナラ勝ちで決勝進出を決めた。その頃、智弁和歌山の選手たちは決勝前取材を受けるため、宿舎の一角に集まっていた。相手が決まったことを受け、1番打者の神先(かんざき)恵都(けいと)は、顔色を変えずに言った。
「どことやるために、これまでやってきたんや」
智弁和歌山の選手たちにとって、大阪桐蔭は特別なチームだ。昨春、選抜を制したばかりの大阪桐蔭と春の近畿大会1回戦でぶつかった。3―6で敗退。夏の甲子園でも2回戦でぶつかった。12安打を放ちながらも、智弁の魅力でもある長打は1本だけ。一度もリードを奪えず、1―2で敗れた。
新チームでの初対決は、昨秋の近畿大会決勝だった。エースの平田龍輝(りゅうき)は和歌山県大会からの疲れがあり、登板しなかった。先発の小堀颯(そう)は5回まで無失点と好投。2番手の池田陽佑(ようすけ)が六回に根尾昂(あきら)に一発を浴びながらも、その1点だけでしのいでいった。
しかし、ここでも打線が抑え込まれる。大阪桐蔭のエース柿木蓮を相手に7安打で、長打は1本だけ。無得点に終わった。
公式戦3連敗。試合後の整列、高嶋監督はボールボーイをしていた林晃汰に言った。「(この景色を)覚えておけよ」
昨夏も中軸を打った林は大阪桐蔭戦に、いい思い出がない。春の近畿は腰のけがで出場できず、甲子園では右ひじの疲労骨折で代打での1打席だけ。秋は右ひじの手術後だったため、ずっとボールボーイを務めていた。林は「『自分も出たいな。倒したいな』という思いで見ていた。悔しかったですよ、本当に」と振り返る。
4番で主将の文元(ふみもと)洸成は言う。「秋の近畿大会で柿木投手を打てなくて、根本的に力不足だと痛感した。冬の厳しい練習で、いまは打ち崩せるだけの力があると思う」
4日の決勝は午後0時半から。天敵を相手に“強打”を見せられるか。智弁和歌山が、4度目の正直に挑む。(小俣勇貴)