安倍晋三首相は15日の臨時閣議で、来年10月の消費税率10%への引き上げに備え、景気の落ち込みを防ぐ経済対策の策定や軽減税率の準備を進めるよう指示した。増税まで1年を切り、事業者などの準備を加速させる狙いがある。来年度と再来年度の予算案に対策を盛り込む。
臨時閣議で首相は消費税率について「来年10月に8%から10%に引き上げる予定だ」と従来の方針を改めて示した。その上で「あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう全力で対応する」と強調した。
自動車や住宅といった大きな買い物の支援策を盛り込む。首相は「来年10月以降の購入にメリットが出るように税制・予算措置を講じる」と述べ、具体策の検討を求めた。中小小売業への支援策として、増税後の一定期間、消費者にポイントとして還元。増税分と同じ2%を還元した場合、それにかかる費用を補助する方向だ。飲食料品などの税率は、8%のまま据え置く軽減税率も導入する。
こうした対策を検討するのは、増税前後で消費者の負担が極端に変わらないようにするためだ。現行の8%に引き上げた直後の2014年4~6月期は、国内の個人消費が実質ベースで約285兆円となり、駆け込み消費があった14年1~3月期の約299兆円から14兆円も減った。消費が駆け込み前の水準に戻るのに3年以上かかった。
増税に向けた事業者の準備が遅れているとの指摘もあり、1年を切り、予算編成を控えたこの時期に対策を指示することで、周知を図る狙いもある。
ただ、首相は14年11月と16年6月、2回も増税延期を表明し、直後の国政選挙で争点として掲げた。菅義偉官房長官は臨時閣議後の記者会見で「(米国が震源地で日本経済にも深い傷を残した)リーマン・ショックのようなものがない限りは、引き上げる」とし、増税に向けた首相の最終判断については「状況をみながら判断されるんだろう」と語った。経済危機が訪れるなど景気の動向によっては実施を見送る可能性がないわけではない。
首相が指示した主な消費増税対策
・幼児教育の無償化
・飲食料品などの税率を8%に据え置く「軽減税率」の導入
・中小の小売業で一定期間のポイント還元
・自動車や住宅購入などに関する税負担の軽減
・防災・減災、国土強靱(きょうじん)化のための緊急対策