日本酒をどれぐらいおいしいと感じるか。その判断は、直前にどんなつまみを口にしたか、で変わる――。一見、あたりまえに思えるような事実を研究で示した論文を、龍谷大の伏木亨教授(食品科学)らのチームがまとめた。日本農芸化学会の英文誌に発表した。
20~40代の男女94人に、新潟県の酒造の有名な銘柄「久保田 千寿」を飲んでもらい、直感的に味を評価してもらった。軽快でさっぱりとした、切れのいい味が特徴の吟醸酒で、あらかじめ銘柄についても伝えた。
「もう一口飲みたくなるか」「高品質なイメージを抱くか」など約20項目の質問に、5段階で回答してもらった。また、「どのぐらいおいしいか」を「全くない」から「非常に」までを直線にし、どのあたりに位置づけられるかを、印をつけてもらい、印の位置で評価を0から100点に当てはめた。
これを「清酒のみ」、直前に「ヒラメの刺し身を食べたとき」「サワラのみそ漬け焼きを食べたとき」の3パターンで、どう変わるか調査。94人の平均で、清酒のみ(70・5)に比べ、直前が刺し身(76・7)と評価が上がった。一方、みそ漬け焼き(72・6)はそれほどでもなかった。刺し身と清酒のみの差は、統計的に意味があった。
質問項目のなかでは、「やみつきになる味かどうか」に関わるものとの関連が深く、うまみや甘みなど「やみつき感」がある味が、この清酒をおいしいと感じるかどうかのカギになるらしいことがわかった。
こうした調査は、どの酒にどの料理が合うのかを客観的に決める方法として活用できるという。伏木さんは「日本酒の効果は料理の味を穏やかに消してくれること。もっと濃厚な味の酒だったらみそ漬けの時の方がおいしいと感じるのではないか」と話している。(鍛治信太郎)