トランプ米大統領が中距離核戦力（ＩＮＦ）全廃条約の破棄を表明したことを受け、ボルトン大統領補佐官（国家安全保障担当）は２２日、モスクワでロシアのパトルシェフ安全保障会議書記と会談し、破棄の意向を伝えた。会談は平行線に終わったとみられ、ボルトン氏はロシアの有力紙「コメルサント」に「ロシアが違反を続け、米国だけが条約に縛られている状態は看過できない」と述べた。

トランプ氏「兵器開発せねば」 ＩＮＦ全廃条約から脱退

ボルトン氏は同紙のインタビューに「ロシアを（条約順守の）義務に立ち返らせれば条約は救えるという考え方があるが、ロシアが違反そのものを否定している以上不可能だ」と語った。ボルトン氏によると、パトルシェフ氏は会談で、ロシアの条約違反を強く否定し、「違反しているのは米国だ」と主張したという。

一方、トランプ氏は２２日、ホワイトハウスで記者団に対し、同条約の破棄について「ロシアが合意を順守してこなかった」と改めて米国の正当性を主張した。「我々はだれよりもずっと多くのカネを持っている。人々の目が覚めるまで我々は（軍事力を）増強する」とも述べ、ロシアと中国を強く牽制（けんせい）した。また、記者団から「ロシアのプーチン大統領に対する脅しか」と問われ、「あらゆる者に対する脅しだ。（脅しの相手には）中国も、ロシアも、（私と）ゲームをしたい者はだれでも含まれる」と威嚇した。

米国はオバマ前政権時代から、ロシアが条約で禁止された射程５００キロ～５５００キロの地上発射型ミサイルを開発していると指摘。ロシアはこれを否定し、米側に明確な違反の証拠を示すよう求めてきた。

米ロはかつて、事実上２カ国だけが対象のＩＮＦ全廃条約を多国間条約化するよう訴え、２００７年の国連総会で共同声明を出したことがある。

ボルトン氏は同紙に対し、この声明についても言及。中国がその後、条約の禁止対象となるミサイルを多数保持するようになったと指摘し、中国を条約に引き入れるのは「もはや現実的ではない」とも述べた。（モスクワ＝喜田尚、ワシントン＝園田耕司）