2016年の米大統領選を巡る「ロシア疑惑」のマラー特別検察官の捜査は、トランプ陣営とロシアとの共謀を認めず、終結した。だが、宗教や移民など社会の不和を生みやすいテーマで米国の分断を狙い、トランプ大統領を利したロシアの巧妙な工作が次々と明らかになった。ロシア側から接触を受けた活動家が手口の一端を明かした。
「反トランプ集会で演説者を務めて欲しい」。ワシントンに住む活動家のマイク・ゴウスさん(67)は大統領選が山場を迎えた16年夏、見知らぬ男からの電話を受けた。英語に独特のなまりがあったが、その時は特に気には留めなかった。ただ、ゴウスさんは「早口で議論の余地を挟まない話し方だ」と思った。
男は「United Muslims of America(米国イスラム教徒の結束)」という団体のメンバーを名乗った。トランプ氏が掲げる「イスラム教徒入国禁止」に反対する集会をワシントンで開くという話だった。
ゴウスさんはイスラム教徒として、多元主義を提唱する著名な活動家。保守系のFOXテレビでも度々、コメンテーターを務めた。男は集会にテレビカメラのクルーを呼ぶようにも求めてきた。ゴウスさんは、正当な抗議デモ自体には賛成だ。だが男の主張は過激だった。「いつかイスラム教徒が米国を支配する」。ゴウスさんは「それは違う。口に出すことすらあり得ない。問題を引き起こす」と反発した。フェイスブックのみの活動実績も不審に思った。
この団体は、ロシアが大統領選…