米航空宇宙局(NASA)の探査機「インサイト」が27日午前4時54分(日本時間)、火星に着陸した。今後2年かけて地下の構造を初めて直接観測し、45億年前に火星がどのようにできたのかを調べる。火星への着陸は2012年の探査機「キュリオシティ」以来。着陸直後に交信を絶った旧ソ連の探査機をのぞくと8機目となった。
インサイトは5月、カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地から打ち上げられ、火星まで約半年かけて4億8200万キロを飛行した。開発費は約10億ドル(約1130億円)。乗用車ほどの大きさで、ロボットアームを使って、火星表面に地震計を設置したり、地下5メートルの深さまで熱流量計を埋め込んだりして、火星で起きる地震や地中の温度を測る。
内部の構造や成分を調べることで、地球のような「岩石惑星」が生まれた過程の解明につながると期待される。
火星は、大気圧が地球の100分の1程度。突入時には鉄が溶けるほどの高温になるにもかかわらず、パラシュートで十分に減速させるのが難しい。今回は耐熱シールドにパラシュート、ロケットの逆噴射を使って着陸を成功させた。
これまで火星への探査機の着陸を成功させたのはNASAのみだ。カリフォルニア州にあるインサイトの管制室では、火星表面までの距離が読み上げられ、「着陸確認」とアナウンスされると、見守ったブライデンスタイン長官ら職員が手をたたいたり、抱き合ったりして喜んだ。
全米の博物館などで着陸時の管制室からの生中継を見るイベントが開催。ニューヨークのタイムズスクエアに設置された巨大スクリーンでも放送された。
NASAは20年にも火星に探査機を送り込み、岩石を採取して生命の痕跡を探る「マーズ2020」計画を予定している。(ワシントン=香取啓介)