世界の注目を集めた日産自動車、仏ルノー、三菱自動車のトップ会談が29日(日本時間)に開かれた。トップ会談の直後に発表された共同メッセージの日本語訳の一部が、数分後に訂正されていたことが臆測を呼んでいる。元の文から「結束」と「コミット」という連携の象徴ともとれる文言が消えていたためだ。 共同メッセージは、会談終了後すぐの午後6時15分ごろに発表された。3社の連携をいち早く強調したい意図があったとみられる。 短いメッセージはこんな文面で始まる。「3社の取締役会は、一貫してアライアンス(提携)の強い結束を維持することを強調してきた。この20年間、他に例をみない成功を収めた」 日本語訳が訂正されたのは、これに続く最後の一文だ。日産が発表した日本語版は当初、「アライアンス(提携)の結束について全面的にコミットしています」となっていた。通信社などはすぐにこれを配信したが、日産は発表の数分後、突然これを訂正した。修正後の文面は「引き続きアライアンスの取り組みに全力を注いで参ります」と変わった。三菱自も、日産と同様の対応をとった。 ルノーが発表した英語版では、当該部分は「We remain fully committed to the Alliance」となっていた。 日産広報は「英語版を訳すときに自然な言い回しに変えただけで他意はない」と説明するが、結果的に「結束」「コミット」という文言がなくなった。 報道発表文の日本語訳がすぐに訂正されるのは珍しい。日産とルノーは、資本関係の見直しをめぐってつばぜりあいが激しくなっており、共同メッセージの日本語訳から「結束」の文字が消えたことは様々な臆測を呼んだ。提携のあり方を巡って各社が神経をとがらせるなか、「事務的なミスとはいえ、この対応はまずかった」と3社連合の関係者は話す。 日産前会長のカルロス・ゴーン容疑者は「コミットメント」(必達目標)を掲げて瀕死(ひんし)の状態にあった日産をV字回復させた。「コミット」は、いわばゴーン容疑者の代名詞。日産幹部は29日夜、「『コミット』を使うと、言葉が重くなりすぎると感じたのではないか」と記者団に話した。 29日のトップ会談で3社は、表向きは結束をアピールした。だが、水面下では日産とルノーの主導権争いが激しくなっている。共同メッセージの訂正からも、3社連合のきしみがかいまみえるようだった。(木村聡史、篠健一郎) |
「コミット」の訳、すぐに訂正 透ける3社連合のきしみ
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