23日まであったレスリングの全日本選手権で、残り10秒での逆転優勝を決めた女子57キロ級の伊調馨。試合直後に行われた表彰式では、赤、青、黄といった五輪カラーの花のブーケが伊調ら表彰選手に贈られた。実はこのブーケは、子供たちの手で作られたものだ。
伊調馨、髪をショートにした理由 残り10秒から逆転V
23日の決勝開始1時間半前。試合会場の東京・駒沢体育館の一室に、4歳から14歳の子ども約40人が集まった。子どもらは天皇杯の冠を持つ大会にちなみ、キクとキク科の植物のダリア、かすみ草をひもで束ね、東京2020のエンブレムに採用されている市松模様柄の布でラッピングしてブーケを完成させた。
この「勝利のブーケ」を作る活動を進めているのが、都内でお花の教室を開く藤本千春さん(45)。「チャレンジ精神をもってスポーツを究めたアスリートに会うことで、子供たちが夢を探すきっかけになるかも」との思いで始めた。今年11月には一般社団法人「キッズブーケプロジェクト」を設立。東京2020参画応援プログラムの認証も受け、現在は小学校の授業でブーケを作り、視覚障害者のサッカー大会などでも贈呈している。
藤本さん自身も特発性大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)症という難病による身体障害者だ。全日本選手権では、重度の障害のある子を持つ家族に青色のダリアを折り紙で作ってもらい、一緒に束ねた。ブーケ作りに参加した子どもたちにはこんなメッセージを伝えた。「青の生花のダリアがなくて困っていたところ、その方たちが助けてくれました。だから、みんなも障害があって困っている人がいたら助けてあげて欲しいんです」。
藤本さんは、「花は短かったり、曲がっていたりと個性がある。それぞれがまとまって一つになるブーケのように、障害のある人、ない人も一つに」。そんな思いも一緒に、選手に手渡された。(藤田絢子)