来年のNHK大河ドラマの主人公、金栗四三は1920年、マラソンの強化のために箱根駅伝を作った。それから100年後にある2020年東京五輪の代表選考会、マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)進出者21人のうち、18人が箱根経験者だ。有力選手が関東の大学に集まる傾向の中、箱根の“スター選手”がマラソンで結果を残せなかった時期は過去になりつつある。
正月の箱根駅伝、科学力で勝て 強豪3校の取り組みは?
MGC進出者の顔ぶれを見ると、高卒の2人、京産大出身の1人を除いた18人が箱根を走っている。4年連続で出場した選手が、佐藤悠基、大迫傑(すぐる)、設楽(したら)悠太、井上大仁(ひろと)、服部勇馬、大塚祥平の6人。川内優輝も学連選抜で2度の出場がある。
大学別に見ると東洋大から最多の3人。酒井俊幸監督は「箱根で優勝をめざす戦略として、将来マラソンをやる前提のペースで走らせている。1キロ2分55秒ペースなどは当たり前」と話す。今年の福岡国際マラソンで日本選手として14年ぶりに優勝を飾った東洋大出身の服部は言う。「酒井監督からは常に世界に目を向けろ、と教えられました。それが今のマラソンにつながっていると思う」
シカゴで日本記録をマークした大迫は長野・佐久長聖高時代に両角速(もろずみはやし)・現東海大監督の、早大時代はコーチだった相楽(さがら)豊監督の指導を受けた。両角監督は「シューズとかそんなところから入ってもいい。それから、中身に近づいていって欲しい」と学生にエールを送り、相楽監督は「同じグラウンドから大迫のような選手が誕生したことは、今の選手にも勇気を与えている」と話す。
マラソンの元日本記録保持者の藤田敦史(現駒大コーチ)を出した駒大からも中村匠吾(しょうご)、大塚がMGCの出場権を得た。大塚は昨年の箱根の5区山登りで区間賞に輝いた新鋭だ。大八木弘明監督は「うちは藤田の時代からずっと箱根からマラソンへ、を目標にやってきた。30歳くらいまでマラソンを続けて時代を作って欲しい」と話す。
来年1月2、3日の大会で5連覇を目指す青学大からはMGC進出者がいない。今年の福岡国際に箱根には出場していない橋本崚(りょう)(GMO)、「3代目山の神」神野大地(セルソース)が出場したが、それぞれ9位、29位に終わった。年明けのマラソンには、一色恭志(ただし)、下田裕太(ともにGMO)らが挑戦する予定だ。原晋(すすむ)監督は「一色や下田ら、学生時代からマラソンにチャレンジする流れを作った。卒業してから4年、5年後くらいが勝負になるのではないか」と今後に期待する。(堀川貴弘)