陸上の日本選手権は、もうトップアスリートだけの大会ではなくなっていた。
男子100メートルと200メートルを制したサニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)らが疾走した福岡・博多の森陸上競技場のトラックを、還暦を超えた選手たちが駆け抜けていく。その一人、女子100メートルに出場した保育園園長の松尾真弓さん(66)は、「中学、高校時代は届かなかった全国の舞台。時間はかかったけど、夢のようだった」。15秒台をマークし、充実感に浸った。
松尾さんはマスターズ陸上の選手だ。マスターズ陸上では18歳以上の若者から高齢者までの男女が、主に5歳刻みの部門別で競い合う。日本陸上競技連盟は今大会、マスターズ種目をオープン競技として導入。成績上位の選手に出場への門戸を開いた。陸上を生涯スポーツとして親しんで欲しい、との思いがある。
大会最終日の6月30日、エリ…