国際陸上競技連盟(IAAF)が新たに設けた男性ホルモンのテストステロン値が高い女子選手の出場資格を制限する規定について、スイス連邦裁判所は3日、発効を一時停止した。女子800メートルで五輪2連覇中のキャスター・セメンヤ(南アフリカ)からの撤回を求める訴えに対し、同裁判所のスポークスマンが「特別暫定措置を発令した」と明らかにしたとAFP通信が伝えた。正式な判決が出るまでの間、セメンヤは制限なく国際大会に出場できるという。
セメンヤの弁護士も同裁判所から通知があったと公表した。セメンヤは弁護士を通じて「大変感謝している。(正式判決で)また自由に走れる日が来ることを願っている」とコメントした。
新規定では、国際大会で女子400~1600メートルの種目に出場するには、数値を薬などで5ナノモル以下に定めた基準値以下にすることが必要となる。
生まれつきテストステロン値が高いセメンヤは、人権問題として受け入れを拒否している。スポーツ仲裁裁判所(CAS)に撤回を求めて提訴したが、5月に「新規定は差別的だが、選手間の公平性を守るためには必要」と訴えを退けられ、CAS本部のあるスイスの連邦裁判所に提訴していた。
ほとんどの女性は、血中濃度が1リットルあたり2ナノモル(ナノは10億分の1)以下ということで、新規定では基準値を5ナノモル以下に定めた。セメンヤら高数値の選手は7・7~29・4ナノモル。骨や筋肉のサイズなどで競技において優位性があるとされている。(遠田寛生)