正月の風物詩、箱根駅伝で、今年は青山学院大が史上3校目の5連覇に挑む。主将でエースの森田歩希(4年)がけがの影響で「花の2区」ではなく3区に回ったが、それでも前評判は高い。ここ数年、どうしてそんなに強いのか。その秘密の一端に迫った。 原晋監督(51)がよく口にするのが、走る練習とは別に青学が取り組んでいるフィジカルトレーニング。通称「青(あお)トレ」だ。2014年にフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さん(47)と原監督が出会い、チームに採り入れて今季で5年目。原監督は、「青トレを中心とした青山メソッドが完成した一年」と今季を位置づける。 特集:箱根駅伝2019 「山の神」どれだけ過酷か伝えたい 箱根5区少し走った 体のコア(体幹)を鍛えたり、ストレッチなどのケアで体の疲労を取ったりする、ランニング以外の強化の総称が「青トレ」だ。その神髄について、中野さんの同僚のフィジカルトレーナー、古谷有騎さん(26)は大きく3点を挙げる。①ウォーミングアップ②フィジカルトレーニング③ストレッチなどのケア。以前から青学も取り組んでいたが、この3点のやり方を大きく変えることで、長距離を走る選手により合った動きを提唱したという。 青学のウォーミングアップは以前、体育の授業でもやるような「屈身」「伸脚」「アキレス腱(けん)伸ばし」などが中心だった。いわゆる「静的ストレッチ」だ。 「ウォーミングアップは走るための体の準備をする時間。そのためには心拍数や体温、筋肉の温度をしっかりと上げないといけない」と古谷さん。筋肉を繰り返し大きく動かして温める「動的ストレッチ」に変えた。 フィジカルトレーニングは、腹筋や背筋運動、腕立て伏せなど、体の補強のためのトレーニング。ところが「競技によって、合うメニューと合わないメニューがある」(古谷さん)。例えば、駅伝はサッカーのように体の切り返しもなければ相手との接触もない。サッカーだと、通常の腹筋運動によって鍛えることができる腹の外側の筋肉(腹直筋)を鍛えればいいが、長時間走り続けることが求められる駅伝では、エネルギー効率のいい内側の筋肉(腹横筋)を鍛える必要があるという。「外側の腹筋だけだと、長距離は持たない。インナー(内側)の腹横筋をメインで使う必要があるので、そこを鍛える動きを採り入れました」 最後にストレッチ。もちろん青トレと出会う前から青学の選手たちも取り組んでいたが、「やる部位がもっと必要なところがたくさんあった」と古谷さんは指摘する。太ももの裏を伸ばすのでも、内側と外側と。ももの前は真ん中と内側と外側など細かい部位ごとの曲げ伸ばしを意識させた。 今季もっとも伸びた選手として、原監督は吉田圭太(2年)の名前を挙げる。「うちの『ザ・青トレ』によって下半身の使い方が非常によくなり、天性の能力が開花した」 吉田本人は「インナーを鍛える基本的なコアトレーニングを積み重ね、結果が出てきた。上半身のぶれが少なくなり、それに連動して下半身の動きがスムーズになった」と話す。10月の出雲駅伝4区、11月の全日本大学駅伝は6区を走っていずれも区間賞の快走。初の箱根となる今大会は9区に抜擢(ばってき)された。 中野さんや古谷さんら「チーム青トレ」のトレーナー4人は、前回大会で山登りの5区を走り、終盤に足をつって失速した竹石尚人(3年)にはこの1年間、特別なメニューを施してきた。「去年は初めての5区で、山登りのための筋肉がついていなかった」 急な勾配を登っていくには、ももの前側の筋肉をつかって地面を押し、足を持ち上げていかないといけない。「ももの前の筋力が足りないと、ももの裏側の筋肉だけで登っていくことになり、最後に力尽きて足がつりやすくなる」 竹石は今回も5区を走る。ももの前側の筋肉を徹底して鍛えた今季は、「昨年以上の走りは間違いなくできると思う」。古谷さんも「つらずに走ってくれると信じています」。 青トレの成果を10人が遺憾なく発揮すれば5連覇は堅いのか、「3強」の一角である東洋大、東海大が脅かすのか、あるいは他の学校がサプライズの走りを見せるか。往路の号砲は、2日午前8時に鳴る。(平井隆介) |
青トレって? 箱根V5狙う青学大、強さの源は割と地味
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